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開幕して5カードを終えたタイガース。7勝5敗1分で3位。18日からはドラゴンズ、ジャイアンツと上位チームとの対戦が控えている。

ここまで記録ラッシュだ。5日は下柳投手が500試合登板。14日は井川投手が1000奪三振を史上5位のスピードで達成した。

そして金本選手がとうとう偉業を成し遂げた。903試合連続フルイニング出場という世界記録を抜き去り、9日、前人未到の904試合まで到達した。数々の苦難をはねのけ、鉄人は「世界の鉄人」になった。


試合終了後、大阪ドームのボルテージはどんどん上昇していった。セレモニーを待つファンは興奮を抑えきれない。照明が落ちドームは闇に包まれた。その時、バックスクリーンに映像が流れだした。プロ入りしてから今までの金本選手の軌跡。懐かしさと感動に浸る真っ暗な大阪ドーム。
ただ無人のレフトにだけ、スポットライトが当たっている。一塁側ベンチ前には白いスモークが立ちのぼる。するとやおらスモークを突き破って、アニキの登場だ!充実感に溢れた表情でマウンドに歩を進めていく。

まずはオーナーから記念の楯、球団社長からは賞金が贈られ、続いて岡田監督、大学の後輩であるベイスターズの門倉投手、そして赤星選手会長がそれぞれ花束を手渡した。

その後、VTRで登場したのは前記録保持者のカル・リプケン氏。「私の記録を塗り替えた金本選手に敬意を表し、心よりお祝い申し上げます。私達は毎試合いいプレーを見せることをチーム全員から当然のように期待されています。金本さんが皆から尊敬され、とても素晴らしい選手だと聞いています。この記録は立派に野球に取り組んできた結果です。大いに誇りにしてください」。このメッセージとともに、サプライズプレゼントが用意されていた。リプケンさんからのバットだ。矢野・下柳両選手から受け取ると、金本選手は軽くスイングしてみせた。

マイクの前でアニキは「ホッとした気持ちと感謝の気持ちでいっぱい」と話し出し、様々な人に感謝の言葉を述べた。「いいプレーをした時に、自分だけじゃなくチームメイト、ファンも喜んでくれる。皆で勝ち取る姿勢が、野球の素晴らしいところ」と語り、「昨日、今日と勝ちゲームにしてくれてチームメイトに感謝している」と、ベンチ前に並んだ戦友たちと握手を交わした。

そして「この記録はファンの声援なしには有り得ない。今までたくさんの勇気、元気を貰いました。これからも全身全霊をかけて、この身を削ってでもチームの為、多くの阪神ファンの為、野球ファンの為に頑張りたい」と更なる活躍を誓った。

セレモニーを終え記者会見場に移動してからも、アニキの顔は上気し輝きっぱなし。「やっと無事終わって安心してるのと、やっとこれで野球に集中できるなと。すごい光栄で、皆さんに期待、注目して頂けてすごい幸せでした」との言葉で幕を明けた会見は、アニキらしくウィットに富みながらも重みがあり、改めてこの世界記録の偉大さを感じさせてくれた。

世界記録はピンとこないという金本選手。「最初からこの記録を目指してやってきたわけではないんで、知らぬ間に積み重ねてきたのでピンとこないのが素直な気持ち」だそうだ。

プロに入った当初は「自分では絶対無理だと思った。2~3年でこの世界からいなくなるだろうな」というくらい、自分の力、技術、全てにおいて及ばないことを実感したとか。そこで「やるべきことはやろう。それで終わっても悔いはない」と、ここまで一歩一歩積み重ねてきたというのだ。

常に全試合出続けたいと思い始めたのは広島時代の2000年。当時4番の江藤選手がジャイアンツに移籍し、野村、前田、緒方の主力選手が立て続けに故障。「大黒柱4人がいなくなって、このチームどうなるんやろ。オレは何が何でも出続けてやろう」と思ったのが始まり。そして1年間出続けた時に感じた、何ともいえぬ充実感。「プロである以上、グラウンドに立ってナンボ。絶対に休まない!」とその時誓ったそうだ。

痛い時、辛い時も少なくなかった。けれどどんな時も、金本選手は弱音を吐かない。「心の中では言い訳ばっかりしてます。口に出すと負け犬みたいでカッコよくないから」。男・金本の美学だ。

「広島は野球選手として生みの親。阪神は育ててくれた球団」―。広島時代は、3人の人物の影響が大きかったという。三村監督からは「麦のように踏みつけて踏みつけてオマエは強くなるタイプ。雑草はアスファルトからでも生えてくるけど、オマエはコンクリで固めても出てきよる」と鍛えられ、高代コーチは守備・走塁を根気よく教えてくれた。「逃げるな」が口癖の山本コーチはケガに対する厳しさを叩き込んでくれた。

そしてFAでタイガースに移籍。

「普通はFAというのは意気揚々と希望を持って移籍するんですけど、ボクの場合は命がけで悲壮感を持って関西にやって来ましたんで、その中で優勝できた喜びというのがすごく大きくて、ボクの選手としてのいいところを伸ばしてくれた球団じゃないかなと思います」とタイガースへの思いを吐露する金本選手。

大観衆の前でヘタなプレーはできないという気持ちと、岡田監督から「4番を打て。ホームランを打て」と言われ、打撃に対してより研究をするようになったこと。「去年、一昨年の30本を越えるホームラン数に出たように、環境が自分を大きくしてくれた」ときっぱり言い切る。

ここまで何回かは諦めたことがあったという。中でも「最大のピンチ」と振り返るのが、一昨年の死球による手首の骨折だ。けれど「監督は何も言わず、『大丈夫か?』とも言わず、普通にスタメンに名前があった。
意気に感じたし、嬉しかった」。最大のピンチでも、出るだけでなく、出る限りは結果も残した。「ボクにとって休むことは仕事を放棄することやから」。

ひとまず世界記録は踏破したが、ここからまた金本選手の新たなる挑戦が始まる。「究極の目標は、フルイニングが途切れた時に、また次の年にフルイニング出ること」と話した後、「できるならばあと3年でも5年でも続けられたら嬉しい」と続けた。実は新聞に載った王監督のコメント―『1500試合目指して頑張れ』を読んだアニキ。「つい計算してしまいまして…あと3~4年はかかるなと。できれば達成したいと思います」と決意も新たに誓った。

「タイガースファンはホントに熱狂的で、人生かけて応援してくれる。エネルギー、パワーをたくさん貰ってるんで感謝してます。それに応えるには、打って打って打ちまくって勝ちまくって、毎年優勝するぐらいの気持ちでやらないといけないと思います」とファンへメッセージを送り、最後は「世界一?ピンとこんよ。王さんの記録(本塁打数)抜いたら世界一と言います」と笑わせて締めた。

でっかいアニキのでっかい記録。でもこれで終わりじゃない。まだまだアニキは走り続ける。常に全力で―。

【阪神タイガース公式サイト トラ番担当記者コラムVol.2006-15 (2006年4月20日)】
http://www.hanshintigers.jp/news/column/c06_15.html
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