奇跡は、起きなかった。しかし、セ・リーグを、プロ野球を、最後まで盛り上げたのは阪神タイガースの不屈の闘志だ。猛虎たちは、最大9ゲーム差を一時は2差まで追い詰め、落合竜を震撼(しんかん)させた。球史に残る猛追撃を虎党は決して忘れない。熱闘をありがとう-、そして、感動をありがとう。

 夢はかなわなかった。中日優勝の瞬間を自宅のテレビで観戦した岡田監督は静かに話した。

 「ウッズとか福留とか打撃3部門を2人で取るとか、投手でも川上が最多勝とかタイトルを取れる選手がものすごく機能したな」。

 連覇を大目標に掲げてスタートした06年。キャンプから苦難の連続だった。ウィリアムスの左ひざ手術から始まり、今岡の右手首死球による離脱、久保田は子供をかばって右手を骨折。「だれがこんなん予想できる」と思わず漏らした。

 思うようにならないチーム。一方で“外野”からの声が降り注ぐように聞こえてくる。「なんで連覇せなアカンのや。70年の歴史でだれもやってないんやぞ」と酒席でやけ気味につぶやいたことも。愛するタイガースを常勝チームに育て上げたい。その思いとだれも到達したことのない『連覇』というプレッシャーに押しつぶされそうになった日々。食事ものどを通らない。眠れない夜。遠征先のホテルで駅弁に茶をかけて無理やり流し込んだことも。

 だが、選手を信じることだけは変わっていなかった。監督業を問われれば「キャンプ、オープン戦までが監督の仕事よ。シーズンに入ったら選手や」という。戦力をそろえ、力を発揮する舞台を整えることだ。開幕を前日に迎えて「楽しみや」と言った。勝てると信じたチームだった。

 球児がお立ち台で涙を流した8月27日からここまで23勝5敗1分け。まさにミラクルともいえる快進撃。連覇を逃したのは事実だ。しかし、この44日間に岡田阪神が見せてくれたのはまさに夢だった。だれも責めまい。取られたなら奪い返せばいい。指揮官は「目指してる勝てるチームにはなってきた。あとは優勝争いするチームに負けないことよ」。こう言って前を向いた。

【2006/10/11 デイリースポーツ】
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