阪神がルーキーの快投で、引き分けを挟んで3連勝。交流戦初のカード勝ち越し(4戦中3勝)を決めた。上園啓史投手(22)が20日の楽天戦で、6回を1安打無失点に抑えてプロ初勝利。初回には金本知憲外野手(39)が楽天・田中から先制打を放って援護した。3試合連続完封試合は37年ぶりの快挙だ。

 固くつぼみを閉ざしたまま、一度も咲いたことがなかった。咲きかけるたび嵐に見舞われ、根ごと地面に倒れ伏した。それでも決してあきらめず、咲くことを夢見た。そしてこの日、大きくその花びらを広げた-。

 「ホントにうれしいです」。地鳴りのような歓声が、骨太の体を揺らす。初めて踏み締めたお立ち台。悲願の初星に、思わず声が上ずった。

 強心臓ルーキーが見せた圧巻の81球。その球筋は、右腕を振り下ろすたびさえ渡った。

 悲願のプロ初星へ、3度目の挑戦。課題の立ち上がりを難なく封じた。1点の援護を得た直後の二回には、二死二塁から渡辺直に左前打を許す。しかし金本がこん身の返球で同点を阻止。これで波に乗った。

 テンポのよい投球が、投打のリズムをつなぐ。直球は大半が130キロ台後半。しかし制球、切れともにすばらしく、敵に付け入るスキを与えない。そして要所で織り交ぜるカーブ、フォーク。六回まで1安打無失点という快投ぶりだ。

 東福岡高時代はエースとして甲子園を目指したが、3年夏は県大会で4回戦敗退。最後の試合は1度もマウンドに上がらないまま、夢はついえた。こぼれ落ちた涙をぬぐいながら、大学進学を決心。さらなる大舞台を求め、故郷を離れた。

 武蔵大入学時は70キロにも満たなかった体を、連日のウエートで鍛えた。練習を終えるとトレーニングジムへ。部員が帰省する連休中も、ただトレーニングに明け暮れた。その結果、10キロの増量に成功。鉛筆のように細かった体に、プロへの礎が宿った。

 完封の期待も集まった上園だったが、六回の好機に代打を送られて降板決定。無尽蔵のスタミナを考えれば、快挙は十分に可能だった。

 「本当なら3つ勝っててもおかしくない」と岡田監督。過去2戦の好投で、すでにルーキーへの信頼は揺るがない。久保チーフバッテリーコーチも「自力でつかんだね。いつもと同じように、テンポも制球もよかった」と熱投を称えた。

 敵将・野村監督までもが褒めちぎった。

 「最近には珍しい根性の据わったピッチャー。球は大したことないけど。うちの打線はあの気迫に押されてた」

 これでローテ定着かの問いに、岡田監督が笑った。「そんなん当然やんか」。すでに巻き返しに不可欠な戦力として期待されている。

 「ここまで立派に育ててくれて、ありがとうございました」。スタンドで観戦した両親への感謝の言葉に、虎投が一層の歓声を送った。無名のルーキーがついにスターへの第一歩を踏み出した。

 泥にまみれた茎がある。葉は砂粒にまみれている。でもだからこそ、その花はたくましく、美しい。むせ返る黒土の上に、大輪の花が咲いた。

【2007/6/21 デイリースポーツ】
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