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【1月21日】2000年(平12)

 プロ野球選手というより、完全に格闘家の顔になっていた。総合格闘家のヒーロー、桜庭和志相手に2分間のキックスパーリングを繰り返したのは日本ハムの下柳剛投手。全身から激しく汗が滴り落ち、顔面はみるみるうちに紅潮。後半、足が上がらなくなるも、最後までキックはやめない。「身体能力高いよね。格闘系をやってもいいところまで行くよ」。3年連続60試合以上登板した、“鉄人”セットアッパーの姿に道場主の格闘家・高田延彦がうなった。

 毎年恒例行事の高田道場でのトレーニング。球界きっての格闘技通の下柳だが道場トレの目的は「心肺機能の向上とスタミナ強化が目的。それ以上にメンタル面での効果。高田さんや桜庭がどうやって強くて大きい相手に向かっていくか、その気持ちを近くで体感するのは、野球にも必要なこと」。91年のダイエー入団時から親交のある高田の道場をオフに訪問。ウエートトレーニングの施設も充実していることから、筋力トレーニングも兼ねて格闘家と“対戦”していた。

 日本ハムから阪神へ移籍しても道場通いは変わらなかった。03年には桜庭とタイ人ボクサー相手に、計8ラウンドのミット打ちを行った。パンチ以上に下柳のキックは評判で「キックだけなら(プライドミドル級王者)シウバを越えている。K-1の選手でも倒れる」と桜庭は絶賛。04年には3ラウンドのミット打ちの後、ヘッドギアなしのスパーリング。マットで寝技を仕掛けられ、苦しさのあまり悲鳴を上げながら5分間耐え抜いた。一つ間違えば、大けがにもなりかねないが、1年間のペナントレースを戦う上で忘れてはならない闘志を植えつけるために必要と主張する下柳。桜庭から「目の前の敵と戦え」とアドバイスももらった。「1試合ずつ集中していけば、勝ち星はおのずと増える」という下柳は、自分に言い聞かせていた。

 「僕を理解するにはすごく時間がかかる」と言ってはばからない、個性派の左腕。阪神では移籍の選手ながら若手からの人望も厚いが、格闘技好きのためか?マウンドでエキサイトすることもままあり、味方のエラーで失点をするとグラウンド上でグラブを叩きつけることも珍しくない。

 07年7月6日の中日7回戦(ナゴヤドーム)で6回3安打無失点に抑え、通算100勝を達成。39歳1カ月での大台到達は、郭源治投手(中日)の37歳11カ月を上回る最高齢記録だった。ダイエー時代、即戦力とされながらも3年間勝ち星がなかった苦労人は、14年の歳月をかけて100個の勝利を積み重ねた。

 5月16日で40歳。08年2ケタ勝てば4年連続の10勝以上となる。FA騒動もあったが、残留を決め、今年の自主トレでは円盤投げと砲丸投げにもチャレンジ。タイガースの3年ぶりV奪回にはまだまだフル回転で投げてもらわなければならない投手だ。

【2008/1/21 スポニチ】
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