【7月8日】2003年(平15)   【阪神8-4広島】第1打席こそ試合の中で一番大切だ。阪神・星野仙一監督の故郷岡山・倉敷マスカットスタジアムでの広島-阪神12回戦。阪神の先頭打者、今岡誠二塁手は初球からフルスイングする気で打席に入った。「1球目からストライクをほしくない投手なんていない。だからそれを狙うんだ」。  広島の先発は右腕クリス・ブロック投手。その初球は外角へ131キロのスライダー。ストライクゾーンにきた。はじめから打つ気があるのだから、バットが自然に反応した。すくい上げるように拾うと、まだ西日に照らされた左翼スタンドに向かって白球が舞い上がった。今岡7号先制アーチでタイガースが先制した。。  これで6日のヤクルト16回戦(甲子園)に続く、2試合連続初球先頭打者本塁打。プロ野球史上初の記録が誕生した。「今岡は集中力が違う。打球が野手のいないところ、いないところに飛んでいく」と星野監督は絶賛。今岡自身は「そうなの?それで?」と全く記録には関心なさそうだったが、こうも付け加えた。「(初球打ちは)考えがまとまらないと打てないからね」。偶然ではない。打席に入る前の準備がすべて、それができていれば当然の結果と言わんばかりの口ぶりだった。  いきなりドカーンとやられたカープバッテリーは阪神打線に完全に飲み込まれた。3回までに5点を奪われると、もう主導権は握れない。打線は12安打を放ったが4点止まりでダブルスコアの完敗。阪神はシーズン初の7連勝で優勝マジック49が点灯した。  南海が65年(昭40)7月6日に58試合終了時点でマジック62を記録したのが、プロ野球最速。阪神の76試合目の点灯はセ・リーグ最速となった。85年の優勝時は104試合目の9月11日(マジック22)に初点灯。なんと2カ月以上早いVモード突入で、気の早い報道陣は最短で8月15日には優勝してしまうという計算までするほど。「マジック?そんなもん気にせんで今日みたいな戦いをしていくだけや。毎試合な」。ぶっきらぼうな星野監督も故郷での快挙に、口調とは裏腹にまんざらでもなさそうだった  5月29日の横浜12回戦で自身初の先頭打者本塁打を放って以来、今岡の先頭弾はこれで4本目。結局、今岡は7月に先頭打者本塁打を5本放ち、計7本を記録。阪神の球団記録である75年の中村勝広内野手、84、85年の真弓明信内野手の6本を抜いた。7本のうち初球はなんと5本を数えた。  球団新記録を達成した今岡は、プロ野球初の初球連弾より球団記録更新の方がうれしかった。「やっと真弓さんのレベルまで近づけた」。背番号7の大先輩、85年の優勝時、35本塁打を放ち“恐怖の1番打者”と呼ばれた選手を尊敬していた今岡。入団した時に目標とした選手に追いつき、追い越せたことは大きな喜びだった。  第1打席で今岡が放ったヒット数はこの年34本。うち27試合で阪神は勝った。勝率は実に7割9分4厘。優勝への貢献度は高く、MVP候補といわれたが、受賞したのは最多勝、防御率1位の井川慶投手。今岡は打率3割4分で、阪神では93年のトーマス・オマリー以来の首位打者を獲得したがそれでも及ばなかった。  今岡の打順は5番になったり、3番になったりと、ここ数年落ち着かない。加えて打撃にも迷いがあるようで、思い切りがなくなったバットからは03年のような快打はなかなか飛び出さない。背番号7の輝きはいつ戻るのか。阪神ファンにとっては気になるところである。 【2008/7/8 スポニチ】
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