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【4月27日】2000年(平12) 

 【阪神1-0広島】降りしきる雨の中で行われた甲子園での阪神-広島5回戦。延長10回、阪神が代打佐々木誠外野手の遊ゴロでホームに突入した、矢野輝弘捕手の猛烈なスライディングで挙げた1点でサヨナラ勝ちした。14年ぶりの9連勝となり、まだ4月ではあったが首位に立った。

 その瞬間、阪神のエース・藪恵一(後に恵壹)投手は「鳥肌が立った」。矢野の突入はタイミング的にはアウト、だったが、「強く入っていけ、と伊原(春樹三塁ベースコーチ)さんに言われた」。

 矢野は激しいスライディングで広島・西山秀二捕手のミットを蹴り上げた。友寄正人球審の右腕が上がりかけたが、目の前に白球がコロコロ転がるのが見えると、両腕を大きく広げた。真っ先にベンチを飛び出してガッツポーズを作ったのは、ほかならぬ藪だった。

 延長戦まで投げ、4安打8三振無失点の藪。自分と代わって打席に入った佐々木に思いを託した。「絶対に点が入ると思っていた」と、チームメイトを信じた結果がシーズン4勝目につながった。

 7年目で10回目の完封勝利だったが、1-0でのシャットアウトは初めて。「興奮してます」と過去3度0-1で敗れた経験があるだけに、“4度目の正直”に初めて心からの笑顔を見せた。

 目を見張るような投球をしていても突然崩れるいつもの“病気”は出なかった。左打者には高速スライダーで内角を突き、一転して右打者には同じスライダーでも大きく曲げて空振りを奪った。

 ハイライトは9回の投球。2死一塁で東出輝裕遊撃手に二盗を決められ、さらに暴投で三塁まで行かせてしまった。スライダー中心の組み立てをすると広島ベンチはみていたが、藪は勝負球にストレートを選んだ。

 「こういう時のためにキャンプでフォームを改造し、十分な投げ込みをしてきた」という自信がそこにはあった。これまで回が進むと落ちた球速が衰えなかった藪は、カウント2-3から142キロの真っ直ぐで朝山東洋右翼手のバットをへし折り、当たり損ねの三ゴロに仕留めた。エースの力投にバックが応え、なんとか1点をもぎ取り、完封勝利をプレゼントした。

 9月で41歳。90年代、弱かったダメ虎のエースとして孤軍奮闘の投球をした右腕は、09年アメリカで3度目のメジャー昇格を目指して、マイナーで汗を流す毎日。米国へ渡って5年。メジャーでちょうど100試合に投げ、7勝6敗の成績を残しているが、まだ完全燃焼したとは言えない。40歳を過ぎても現役バリバリの投手は日本でもメジャーでも珍しくなくなった。が、何度も瀬戸際に追い込まれた藪が不死鳥のごとく再び大リーグのマウンドに立つ日がくれば、野球をに挫折しかかっている選手に勇気と希望を与えることになる。あと9勝すれば、日米通算で100勝。ユニホームを脱ぐのはまだ早や過ぎる。


【2009/4/27 スポニチ】
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