【ニューヨーク=米沢秀明】第79回米球宴が15日、今季限りで80余年の歴史に幕を降ろすヤンキースタジアムで開幕し、イチロー外野手(マリナーズ)がア・リーグの1番右翼、福留孝介外野手(カブス)がナ・リーグの8番中堅で先発出場。昨季、迷った末に強豪ヤンキースからのオファーを断り、マリナーズとの5年再契約を決めたイチローが、世界の中心NYのファンから初めて声援を受けて立つ大舞台。マリナーズの再生にかけた昨季MVP男の脳裏に一体何がよぎるのか-。

 8年連続出場のイチローが「今季の球宴は特別なものになる」と語って臨むNYでの球宴。普段は最大の敵地としてブーイングを浴びながら入るはずの打席が、この日ばかりは正反対。

 ベーブ・ルースの家と呼ばれる現ヤンキースタジアムの最後の記念すべき球宴で、くしくもイチローは2番ジーター、4番Aロドリゲスのヤンキースの大スターを従えるように1回の1打席目に入り、右飛だった。

 普段はイチローに厳しいNYのファンだが、試合前にマンハッタン市内で行われたパレードでは大声援を受けた。白いジャケットにサングラスのイチローと、赤いワンピース姿の弓子夫人のカップルがNYの大通りの車上から手を振った。もし、イチローが昨季ヤンキースへ移籍する決断をしていたら…、と想像させる一場面ではあった。

 「NYのファンは球場ではブーイングをしても、街の中で会ったら急に『イチロー、サインをくれよ』、って言ってくるような感じ。歴史のあるここのクラブハウスでは、強いチーム独特の空気が漂っていたんじゃないかと。今とはちょっと違った凛とした雰囲気だったんじゃないかと想像しているんだけど」とイチロー。

 記者会見では、イチロー自身も、ピンストライプのユニフォームを身につけた自分の姿を想像しているような遠くを見るような視線。マリナーズはすでに今季も絶望的な借金を抱えての今季中盤。シーズン最多安打記録更新をはじめ、数々の個人記録を集めて大リーグのスターとなったイチローが、最大の目標とするワールドシリーズ制覇の夢は遠のくばかり。NYでの球宴で活躍すればするほど、声援を浴びれば浴びるほど、昨季の自分の選択を恨めしく思い返す瞬間があるかもしれない。

 渡米後8年間でイチローの大リーグでの存在感は大きく膨らんだ。球宴練習中、イチローのサインを求めて米国の観客がもみ合う様子は人気の高さをうかがわせる。球宴チーム内でもベテランの域に入り各選手の注目も高い。

 「イチローはクラブハウスの後ろの方に座って、クールにしていた。最初は、やはり球宴のクラブハウスの中も張りつめた雰囲気がある。しかし、イチローがいきなり大声を出したのでみんなずっこけた。面白いよ。普段はあまり話をしないイチローの声がチームをうち解けさせる効果は大きかった。イチローが僕の話していることをわかっているかどうかはわからないけど」と前日本塁打競争で優勝したモーノー内野手(ツインズ)。言葉の壁を超えてチームリーダーになろうとしている。

 イチローの過去球宴7試合での成績は18打数6安打、打率.333。昨季は米球宴初のランニング本塁打を含む3安打でMVPとなった。当然、相手チームのイチローに対する意識は強い。

 ナ・リーグ先発のシーツ(ブルワーズ)は、「イチローは甘いボールを投げるとスタンドに運ぶ力がある。だから初球はフォークボールを投げる」と予告投球していたほどだった。

 押しも押されもしない大リーグの先頭打者になったイチローが、もう一度自分の野球人生を考え直す機会になりえるヤンキースタジアムなのかもしれない。

【2008/7/16 ZAKZAK】
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