1次リーグ敗退でサッカー日本代表のW杯は幕を閉じた。サムライ・ブルーを引っ張ってきたMF中田英寿(29)。その圧倒的な存在感に周囲は、今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で“意外”なリーダーシップを発揮し、日本を世界一に導いたイチロー外野手(32)=マリナーズ=のイメージを重ねた。しかし、結果は惨敗。イチローにあって、ヒデになかったものは何か。各界の識者のコメントから検証する。

中田は、自分にも他人にも決して妥協を許さなかった。W杯前から繰り返された「チームの雰囲気が、フレンドリーすぎる」などと仲間への正論ではあるが、容赦のない批判。東大からロッテに入団、引退後は米国でスポーツビジネスを研究した小林至氏=江戸川大教授=は「身内の悪い話が、メディア経由で伝わるとチーム内で摩擦が生じる。指摘は本人だけにするべきだったのでは」と話す。

一方のイチローは、絶望的状況でも、どこか余裕を感じさせる言い回しが目立った。チームメートには「歴史的な日にしよう」、ファンには「いくらでも期待して下さい」などと盛り上げ役を買って出た。韓国に連敗しながらも、奇跡的に準決勝進出を決めた際は「3回同じ相手に負けることは許されない」など刺激的な言葉であおり立てた。小林氏は「イチローの前向きな言動と選手個々のプライドの高さがうまくかみ合ったと思う」と分析した。

「ヒデは米軍で言えば『フォロー ミー』(オレについて来い)と言って、隊を率いる若いリーダー。いわば鬼軍曹型では」というのは元自衛隊員で軍事ジャーナリストの神浦元彰氏だ。

「鬼軍曹は部下に見本を示し、自ら前に出る。だが実を言うと、このタイプは兵が戦死する確率が高いというデータもある」と士気と結果が相反したのではと指摘。「リーダーは周囲を動かすのが仕事。必要以上の役割をすると隊列は乱れる。それは戦場では死を意味する」と続けた。大物ぶらず、輪に飛び込んで、一体感を作った調整型のイチローに軍配を上げた。

イチローは準決勝の韓国戦前に仲間と一緒に浴びるほど酒を飲み、英気を養った。「ヤンキー先生」こと義家弘介氏=横浜市教育委=は「私も血気盛んなグループを引っ張った経験があるが、求められたのは『おちゃめさ』。意味もなく花火大会を企画して盛り上げた。時にはユーモアも必要」と説く。

中田もクロアチア戦を前に自ら声を掛け、「すき焼き決起集会」を開いたというが、粋な計らいで選手間の距離が近づいたとは言い難い。

ブラジル戦後にピッチで涙した中田に駆け寄ったのは、チームメートでは宮本主将だけ。各氏ともに「近づきがたい存在だったのでは」と話す。孤独なリーダーに奇跡は訪れなかった。

【2006/6/25 スポーツ報知】
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