【パリ13日=国際電話】

ドイツW杯決勝でフランス代表MFジネディーヌ・ジダン(34)がイタリア代表DFマルコ・マテラッツィ(32)=インターミラノ=に頭突きを食らわし退場処分を受けた問題で、国際サッカー連盟(FIFA)は13日、両者を20日の聴聞会に召喚すると発表した。ジダンが12日(日本時間13日)に家族について侮辱されたことが原因だったと初めて告白した問題は、解決どころか一気に拡大する様相を呈してきた。



この期に及んで「言った」「言わない」は言わせない。

ジダンの頭突き事件から4日たったこの日、両選手に対する規律上の調査を開始したことを明らかにしたFIFAが、何と2人をスイス・チューリヒのFIFA本部に召喚してでも真相を究明すると発表した。W杯閉幕後も世界の耳目を集めている問題が、ついに裁判形式で裁かれることが決定した。

ジダンは前日12日(日本時間13日)、母国フランスの2つのテレビ局でインタビューに応じた。マテラッツィの具体的な挑発内容については明言を避けながら「一度耳にしたら逃げ出したくなるような言葉だった。私は実際に逃げ出したが、二度、三度と耳にした」と説明した。

W杯決勝の延長後半の“凶行”の原因が、マテラッツィによる母親と姉への再三の侮辱発言だったことを初めて告白。アルジェリア系移民の子として、貧しかった幼少時代に自身を支えてくれた母・マリカさんをはじめとする家族への侮辱が事実なら、耐えがたいことだったに違いない。

「もちろんやるべき行為ではない。テレビで20億人、30億人の人たちが(決勝を)見ているわけだし、何百万人もの子供たちに謝罪したい」と語ったジダンだが、頭突きという自身の暴力行為については後悔していないと断言。「私がやった行為は許されない。しかし言いたいことは、本当に責められるべき人間を罰する必要があるということだ」と逆にマテラッツィに対する処分を要求した。

一方のマテラッツィは13日付の伊紙ガゼッタ・デロ・スポルトで反論。「宗教や政治、人種に関することは一切、口にしていない。私自身も15歳で母親を亡くしており、彼の母親を侮辱してはいない」と主張した。

これに先立って、FIFAはブラッター会長が12日(日本時間13日)に「あの行為(頭突き)によって私は心を痛めている」とジダンの“凶行”に不快感を示すとともに、ドイツW杯でのMVPにあたる最優秀選手賞『ゴールデンボール賞』のはく奪を示唆。そのためにも、事件の真相究明が不可欠な状態になっていた。

世界の注目がますます集まっていく中、ついに動いたFIFAは、ジダンに18日までに自身の主張を書面で提出する権利を与えると声明。マテラッツィには反論の機会が与えられたのち、20日に両者が相対する聴聞会を開いて、同日中に結論を出すという。

ブラジルの王様・ペレがサッカーを「ビューティフル・ゲーム(美しいスポーツ)」と呼んでから30余年-。ピッチ上で起きた事件がついに、裁判形式で裁かれる時代が到来してしまった。


★ジダン・発言要旨
(マテラッツィが)シャツを引っ張るので、私は「ほしいなら試合後に交換してやる」と言ったんだ。そうしたら、彼はとても耐え難い言葉を口にしてそれを何度も繰り返した。言葉は暴力以上に激しいことがある。私の非常に奥深いところに触れる言葉だった。

(侮辱の中身を言うのは)大変なことだ。母と姉にかかわる極めて個人的な内容だし、非常に激しく、一度耳にしたら逃げ出したくなるような言葉だった。私は実際に逃げ出したが、二度、三度と耳にした。

何よりも、まず自分は男だ。だから立ち向かった。もちろんやるべき行為ではない。テレビで20億人、30億人の人たちが(決勝を)見ているわけだし、何百万もの子供たちが見つめているのだから…。彼らに対して自分は謝罪する。

(しかし)自分の行為を後悔するわけにはいかない。後悔すれば(マテラッツィが)ああいう言葉を口にしたことが、正しかったということを意味してしまう。それはできない。

(国際サッカー連盟に)言いたいことは、挑発がなければ、それに反発する(暴力)行為も起こり得ないということ。責められるべきは挑発してくる人間だ。W杯の決勝で、自分の選手生活の終わりまであと10分間しか残っていないという状況で、自分の喜びのために私があんな行為をやったと思いますか?

私がやった行為は許されない。しかし言いたいことは、本当に責められるべき人間を罰する必要があるということだ。


★引退の決断「変えない」
ジダンは自身の去就について改めて現役引退する意思を明らかにした。「多くの人が(もう一度プレーする気はないかと)声を掛けてくれるが、(引退は)すでに決めたこと。この決断を変えるつもりはない」と語った。4月下旬にドイツW杯後の現役引退を表明していたが、頭突き事件の影響で正式に現役を退く意思を伝える機会がなかった。現役を続けて汚名返上を求める声も挙がったが、ジダンの考えは変わらず約17年間のプロ生活に終止符を打った。


★ジダンは母国でヒーロー?
12日(日本時間13日)の生放送によるテレビ告白から一夜明けた13日、フランス国民は政治家から一般市民まで一様にジダン支持を表明した。「子供たちに対する謝罪を忘れなかった」と評価したのはラムール・スポーツ相。9日の試合後にはW杯優勝を逃した“戦犯”としてジダンを批判した各紙も、手のひらを返したように擁護に回った。リベレーション紙は「怒りを爆発させることによって、彼は伝説的な選手としてではなく血の通った1人の人間として、自身の選手生活に幕を引いた」と賛辞を贈った。

【2006/7/14 サンスポ.COM】
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