■投手陣は陳偉殷が大黒柱

 7月14日に発表された台湾代表は、平均年齢約24歳と若い選手が中心。結果を残した世界最終予選のメンバーから16名を残し、戦術面での柔軟性を保てるように配慮した選出となった。

 まずは投手陣から見てみよう。先発での起用が濃厚なのは、陳偉殷(日本プロ野球・中日/登録名「チェン」)、陽建福(興農)、潘威倫(統一)。7月に入り先発で好投を続ける陳偉殷には、投手陣の大黒柱として大きな期待が寄せられる。現地の報道によれば、初戦のオランダ戦、5戦目の韓国戦に先発することが有力視されている。
 アジア予選の日本戦で好投した陽建福は、今季15試合で4勝7敗、防御率4.48。今シーズンの成績は今ひとつだが、代表のユニホームを着ると変身。闘争心をむき出しにする反面、頭脳的な投球で完封勝利を演じるなど、つかみどころがなく厄介な存在だ。
 潘威倫は昨年12月のアジア予選、今春の世界最終予選を辞退する原因になった右肩の状態が芳しくなく、直球があまり走らない。だが、制球重視の投球で昨年からの連勝記録を21まで伸ばし、加えて7月10日の中信戦で台湾プロ球界史上6人目の無安打無得点試合を達成。上り調子で五輪を迎えそうだ。

 抑えは、アテネ五輪とアジア予選の日本戦で登板した経験豊富な曹錦輝(元米大リーグ・ロイヤルズほか)と、世界最終予選で抑えを務めた羅嘉仁(中國文化大学)の2人体制で臨む。代表発表直前に台湾へ戻った曹錦輝は謝長亨・代表投手コーチ(中信監督)の前で投球を披露してメンバー入りが決まったが、今季途中でのロイヤルズ退団の原因となった右ひじの状態が唯一の気がかりだ。
 大学でも抑えを務める羅嘉仁は、常時150キロを超えるストレートを武器に、台湾のアマチュア球界ではほとんど無敵の状態になった。現在、米大リーグの複数の球団が関心を持っていると言われ、五輪は飛躍を目指す彼にとって絶好のアピールの場になりそうだ。

■心強い4番・陳金鋒の復帰

 野手は、『アップルデイリー』(台湾の日刊紙)が以下のように先発メンバーを予想した。私の予想もほぼ同じなので、参考にしてほしい。

1番・張建銘(右/興農)●
2番・林哲シュエン(中/レッドソックス1A)
3番・彭政閔(一/兄弟)
4番・陳金鋒(DH/La new)
5番・張泰山(三/興農)
6番・林智勝(遊/La new)
7番・羅國輝(左/マリナーズ1A)
8番・葉君璋(捕/興農)
9番・チャン智賢(二/レッドソックス1A)●
※打順・名前(ポジション・所属)●は左打者

 世界最終予選を負傷で辞退した陳金鋒が4番・DHに戻り、張泰山が5番に入ることで、得点力の向上が見込めそうだ。日本戦での活躍が際立つ陳金鋒は、打線だけでなくチームの精神的支柱。その陳金鋒の前後を打つ彭政閔は、内角を器用に打ち返し、状況に応じた打撃ができるのが強み。
 張泰山は世界最終予選で4番に入り、26打数8安打(二塁打1)、3打点と、4番打者としてはもの足りない結果に終わった。しかし、大仏の如く4番に鎮座する事で打線に精神的安定をもたらし、若い選手たちの負担を軽くする役割を果たした。

■“台湾のイチロー”に期待

 台湾のファンの期待を膨らませるのは、世界最終予選で大活躍した林哲シュエンと羅國輝の2人。1988年9月21日生まれの林哲シュエンは、ことしのフューチャーズゲームで五輪代表候補で編成された米国選抜チームと対戦。2点本塁打を放ち、MVPを獲得。期待はさらに大きくなっている。打撃はまだ未熟だが、“台湾のイチロー”の呼び名にふさわしい守備と走力に注目だ。
 羅國輝は、現役時代の秋山幸二(現福岡ソフトバンクコーチ)をほうふつとさせる三拍子そろった選手。憧れの陳金鋒のように、世界最終予選でファンを魅了した力強くて勝負強い打撃の再現を多くのファンは待ち望んでいるはずだ。

 79試合終了時点で打率3割台を維持するチャン智賢は、2004年9月4日に行われたAAA世界選手権の日本戦に台湾の4番打者として出場。先発したダルビッシュ有(東北高・現北海道日本ハム)と対戦し、結果は3打数1安打2三振だった。この約4年ぶりの対決が実現したら、ぜひ見逃さないでほしい。

 外野手3名は俊足で守備範囲が広く、強肩も自慢。その反面、内野は一塁手の彭政閔以外に不安がつきまとう。エラーが多く、二塁手のチャン智賢は79試合で16、遊撃手の林智勝は45試合で19、三塁手の張泰山は昨季79試合で23。西岡剛(千葉ロッテ)、川崎宗則(福岡ソフトバンク)、青木宣親(東京ヤクルト)といった俊足の選手にバントなどで揺さぶられたら、内野の守備が破綻する恐れがある。この不安は、年初に行われたプエルトリコ合宿で守備の評価を上げた19歳の郭嚴文(レッズ・ルーキーリーグ)を守備固めで起用するなどして解決したい。

 5月にある代表選手を訪問したとき、「オレたち、日本に勝てるのかな…」と話していた。現地での分析報道も「中国、オランダ、カナダ、韓国に勝って、4強入りを目指す」と日本やキューバ、米国といった強豪に対しては消極的だ。こうした報道や先入観を打破するのは、大舞台での経験が少ない若者たちから生まれる無限大の力だろう。「歴代最弱の代表」と呼ばれながらも3位に入った世界最終予選のような戦いができれば、今大会の台風の目になるはずだ。

■台湾五輪代表24名メンバー

投手10名:
潘威倫(統一)
陽建福(興農)
陳偉殷(中日)
曹錦輝(元米大リーグ・ロイヤルズ)
張誌家(La new)
許文雄(La new)
李振昌(台北体育学院)
倪福徳(中信)
羅嘉仁(中國文化大学)
鄭凱文(中國文化大学)

捕手3名:
陳峰民(La new)
高志綱(統一)
葉君璋(興農)

内野手6人:
張泰山(興農)
彭政閔(兄弟)
林智勝(La new)
チャン智賢(レッドソックス1A)
石志偉(La new)
郭嚴文(レッズ・ルーキーリーグ)

外野手5人:
潘武雄(統一)
羅國輝(マリナーズR)
林哲シュエン(レッドソックス1A)
張建銘(興農)
陳金鋒(La new)


著者=小川聖市

【2008/8/4 スポーツナビ】
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