【8月28日】1985年(昭60) 

【阪神6-0広島】わずか0・5差で迎えた首位攻防戦。甲子園球場の阪神-広島19回戦は、阪神・真弓明信右翼手のシーズン6本目の先頭打者本塁打と岡田彰布二塁手の25号満塁弾で5-0と首位阪神が試合を優位に進めていた。

 高校野球に本拠地を明け渡し、真夏のいわゆる“死のロード”から凱旋して2戦目の甲子園は、21年ぶりの優勝に向かってばく進するタイガースを見ようと、5万6000人の超満員の観衆で埋め尽くされたが、そんな中で思いもよらぬ前代未聞のファウルが飛び出した。

 6回、無死一塁の場面で阪神の最強助っ人ランディ・バース一塁手がカウント2-2からファウルを打ち上げた。三塁側スタンド方向へ高く上がった飛球は、銀傘上の内野照明塔の水銀灯を直撃。中央を覆う厚さ6ミリ、直径49センチの強化ガラスを粉々に砕いた。

 直径2、3ミリの破片が夜空から観客席に降り注ぎ、スタンドは騒然。下は4歳の男の子から上は60歳までの男性の計5人が腕やあごなどにけがをした。幸いだったのは、破片が割れると球状になるため、鋭利な刃物のようにはならず、いずれも軽傷で済んだことだった。直ち球場内の救護室で手当てを受け、5人とも擦り傷程度。全員が席に戻り、試合を再度観戦できた。

 照明塔の水銀灯は観客席から約30メートルの高さにあるが、バースの“大飛球”はこれを直撃。甲子園球場始まって以来の照明破損という“事件”となった。

 これでビビったのか、広島の3番手・池谷公二郎投手はこの日大当たりの岡田に猛打賞5打点目となる、左中間二塁打でトドメの1点を奪われ、前日27日に首位を陥落した広島は、阪神に1・5差をつけられることになった。

 予想だにしなかった“災難”に遭遇した阪神だが、翌29日もひと騒動あった。甲子園球場内にある倉庫に泥棒が侵入。球団が保管していた過去の古くなったユニホームやファンサービスの景品が盗まれた。現金などの被害はなかったが、2日続けての事件に球団は対応に追われることになった。

 85年8月といえば、阪神にとって忘れられないのが、11日に起きた日航機墜落事故。搭乗していた中埜肇球団社長が亡くなった。31日に大阪府吹田市の千里会館で社葬が営まれ、タイガースの選手は全員ユニホーム姿で参列。バースは言った。「去年は父親を亡くし、今年はチームのプレジデントを…。悲しいことが続く」。そしてこう続けた。「だからこそ優勝してはなむけにしたい」。

 バースのバットは9月になっても冴えわたり、大ファウルではなく、大本塁打をさらに量産。3冠王にMVPを獲得、日本シリーズでも勢いが止まらなかった。阪神球団史上、2リーグ分裂後ただ1度の日本一になった85年。バースとともに思い出すシーンは本当に多い。

【2009/8/28 スポニチ】
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