【10月2日】1995年(平7) “2年目”もスゴかったイチロー、本塁打で5冠締め

 【オリックス5-3近鉄】ブルーウェーブの優勝が決まってから2週間。最終戦のいわば消化試合に2万9000人の観客が集まった。本拠地グリーンスタジアム神戸の観客動員数はこれで計165万8000人に。球団新記録となった試合でイチローはそのお客さんに何か“土産”を持って帰ってほしいと思っていた。

 5回1死一塁。「狙ってはいなかった」とはいうものの、甘い球には自然と体が反応した。近鉄・酒井弘樹投手の落ちきらないフォークをすくい上げるようにさばくと、打球は高々と右翼に上がった。感触バッチリの25号2点本塁打。オリックスの5点目は1978年(昭53)と並ぶシーズン82勝の球団タイ記録を決定付けた勝ち越し弾となってスタンドに消えた。

 これで打点80。全日程を終えていたロッテ・初芝清内野手に並んだ。すでに打率3割4分2厘で2年連続首位打者が決まり、アベレージ同様ぶっちぎりの数字で盗塁、安打数そして出塁率のタイトルが確実となっていたイチロー。これに打点が加わると、連盟表彰6部門の打撃関連タイトルのうち本塁打王を除く5つまでにイチローの名前が刻まれることになった。

 打率と盗塁王の同時受賞は過去3人いたが、これに打点が加わるとなると初の快挙。首位打者も2年連続して130試合すべてに出場しての獲得という球界初の素晴らしい記録だった。前年の94年、日本人初のシーズン200安打以上を記録し、旋風を巻き起こしたイチローだが、2年目のジンクスなど全く関係なく進化を遂げてチームを前身の阪急ブレーブス以来11年ぶりに優勝へ導いた。

 ただ、打点王は確定ではなかった。2位の日本ハム・田中幸雄内野手が79打点で1点差で追っており、2試合を残していた。「みんながベストを尽くして頑張ってくれればいい。打つな!って祈ることなんか絶対にないですから」とイチロー。田中に抜かれたとしても、1年間全試合に出て、リーグ優勝を勝ち取ったことの方がタイトルよりもはるかに価値があると言わんばかり。実質2年目にして目先の賞にはそれほどこだわっていなかった。結局、田中は1打点を加えただけでシーズン終了。プロ野球で初めて打点王が1リーグで3人誕生するという珍事で閉幕した。

 イチロー人気は頂点に達しつつあった。オリックスとの日本シリーズでの対戦が決まったヤクルトは、神宮球場での開催となる第3戦から5戦までの入場券購入のための整理券を3日から配布することになっていたが、前日の2日の明け方前から球場には列が出来始め、夕方には1キロ近くにもなった。行列の中には女性も目立ったが、口々に言うのは「イチローさんが見たい!」という決まり文句だった。

 午前4時から並んだという一番乗りの男性はヤクルトファンだったが、イチローに対する思い入れも強かった。「3年前にジュニアオールスターで(観戦していた)僕の上を越えるホームランをイチローが打ったんです。その時からすごい選手だなって注目していた。僕はライト側で応援していますけど、イチローの守備も間近で見られるのは楽しみ」。

 筋金入りの野球ファンからにわかファンまで、イチローの人気は日本中を席巻していた。


【2009/10/2 スポニチ】
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