【5月8日】1997年(平9) 


 【阪神6―1中日】2回表、阪神の攻撃が始まった直後だった。バックネット裏、三塁側内野席、一塁側の5階席など計6カ所で次第に傘の花が開いた。この年開場したばかりのナゴヤドームで、ヤクルトの得点シーンでもないのに傘が使われるのはあり得ないこと。天井を見上げると水滴がポタポタ。まるで雨の日に外にいるのと変わらないような冷たいしずくが観客席に落ちた。

 この日の名古屋の天気は雨。試合が始まった午後6時以降の雨量は15ミリ。強い雨ではあったが、決して常識では考えられないほどの大雨が降り続いたわけではなかった。「なんで屋根付き球場で雨が降るんだ!」「欠陥工事か?金返せ!」。“被害”に遭った約40人の怒り心頭。中には土砂降りの雨に降られたようにずぶ濡れになった中日ファンさえいた。

 異変に気がついた球場係員が駆けつけたのは、雨漏りが始まってから約30分後。対応の遅さに「金だけ取って放っておくのか!」とかみつかれた。周囲の観客も「傘で試合が見られない」と“被害者”に抗議し、口げんかになる始末。楽しいはずの野球観戦が騒然とした雰囲気になり、ドーム側は急きょ40人を予備の放送ブースに避難させた。

 観客の怒りはなかなか収まらない。「ビールも売っていないし、応援もできないところで見るのか」「モニターで野球見ているなら家と同じ」と不満続出。ドーム側は平謝りするしかなく、クリーニング代などできる限りの弁償をすることでなんとか勘弁してもらった。

 雨漏り騒動に歩調を合わせるように中日投手陣は3回までに6失点と大乱調。打線もわずか4安打で、見せ場は9回に大豊泰昭一塁手の適時打のみで、阪神の先発古溝克之投手に7年ぶりの完投勝利を許した。

 試合終了後、ナゴヤドームは夜を徹しての応急処置に追われた。雨漏りの原因は天井パネルをつなぐ樋(とい)状の部分に水が集中し、流れが止まり、それが逆流してあふれ出し、屋根から水滴がしたたり落ちたというものだった。そのため樋の部分を補強すると同時に、ドームの屋根に塩化ビニールシートを敷いて樋へ一度に大量の水が流れ込まないようにした。

 実は雨漏りは初めてではなかった。3月18日の球場開きの前夜にも確認され、応急処置と点検がされていた。4月5、6日の横浜戦でも少量の漏水があった。加えて、星野仙一監督が来客などの応対をする監督室のトイレも汚水が逆流するというアクシデントがあったことも判明。「ナゴヤドームは欠陥だらけや。いっそのことドームを業者に引き取ってもらって、ナゴヤ球場に戻ろうか」と星野監督は冗談交じりで話すほどだった。

 ドーム元年、中日は雨漏りだけでなく、広い球場でのディフェンス面で悩まされ、首位ヤクルトに24ゲーム差をつけられ、5年ぶりの最下位に転落。チーム打率はリーグ最下位、防御率も5位とドーム同様、穴だらけ!?だった。


【2010/5/8 スポニチ】
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