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【4月14日】2000年(平12) 

 【阪神7―1中日】打球が高々と甲子園の夜空に舞い上がると、一塁側ベンチの指揮官はその行方を見ながら腰を浮かせた。

 平尾博司二塁手がガッチリ飛球をキャッチして試合終了。16年間在籍したオリックスから阪神にFA入団した星野伸之投手が移籍後初勝利を完投で飾り、笑顔で野村克也監督に歩み寄った。しっかり手を握り合った2人はどちらともなく微笑み合った。ノムさんの指揮官としてこれが1200回目の勝利の握手だった。

 「ピンときませんなぁ」。いつものように素直に喜ばず、照れ隠しをする野村監督。完投した星野について言及し「何やあいつ、女みたいな手やったぞ。あれでよく100球も放るのお。信じられんわ、あんな細腕で170近くも勝ってきたなんて」。自ら出馬して、獲得に乗り出した左腕でもあり「きょうは言うことなし。さすがと言うか、彼の場合、持ち味が出るかどうかで決まる。あんなストレートでも勝てるんやからユニークな投手。おもしろい」と最大限の賛辞を贈った。

 監督として通算1200勝はプロ野球8人目。野村の恩師である鶴岡一人監督の1773勝、勝率6割9厘を筆頭にほとんどが勝率5割3分以上勝っている監督だった。野村監督のこの時点での勝率は5割1分9厘。毎日・大毎(現ロッテ)、近鉄、広島、大洋の4球団で19年監督を務めた別当薫の5割1分7厘をわずかに上回っている程度で、下から2番目。「いつも弱い球団ばかり引き受けてきた」という本人の言葉通りだが、さすがに5割を超える成績を残しているあたりは名将といえる数字である。

 星野にとっても感慨深い1勝だった。開幕の横浜戦ては2回5失点でKO。2試合目の広島戦でも好投はしたが勝ち星は付かなかった。「不甲斐なかった。広島戦のように投げればいつかは、とは思っていたが、甲子園での1勝は本当に嬉しい」と興奮するベテラン。ストレートの最速は120キロ、カーブは87キロの超スローボールを駆使し、5安打5三振1失点。野村監督が言うように言うことなしの投球だった。

 中日の山本昌広投手に投げ勝ったのも喜びを倍増させた。山本とは同じ昭和40年生まれで結成している「40年会」の仲間。しかも同じサウスポー。「マサに投げ勝てたのも特別。同い年だし、仲はいいけど野球では別だからね。きょうは最高の1日」と笑いが絶えなかった。

 打線では巨人を追われ、ヤクルト時代の師である野村監督の勧めでタイガース入りした広沢克実一塁手が試合を決める2号ソロを4回にバックスクリーンへ運んだ。「監督の1200勝?すごいね。オレはいくつくらい貢献しているんだろう」と広沢。これがヤクルト、巨人時代と合わせて、4番として140本目のアーチだった。

 多くの選手、スタッフに名監督は支えられている。野村監督は「声をかけた選手が活躍してくれた。監督冥利に尽きる」と締めて球場を後にした。


【2011/4/14 スポニチ】
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