【6月14日】2009年(平21) 

 【広島4―4西武】指揮官は迷わずこのシフトを選んだ。延長12回、西武は無死満塁と絶好のサヨナラ機をつかんだ。広島のブラウン監督はコーチ陣を通して、守備位置の変更を指示。自身は選手交代を牧田匡平球審に告げた。

 広島のとったシフトは内野手を5人に増やし、外野手を2人に減らすもの。具体的には左翼の末永真史外野手を小窪哲也内野手に交代し、その小窪を左翼の定位置ではなく、二塁ベース手前で守らせた。赤松真人中堅手を左中間に配置、広瀬純右翼手ょを右中間に配置した。

 どよめく西武ドームの3万2000人超の観客。大リーグではしばしば見られるフォーメーションだが、これを日本でやるのは広島ぐらい。過去3度、ブラウン監督は土壇場の場面で採用していた。

 狙いは内野ゴロを打たせて併殺を奪うことにある。広島のマウンドは左腕の青木高広投手がいかに低めに投げられるかが成否のポイントだった。意識しすぎた青木は2球とも低めにいったものの、ボールに。押し出しになっては何の意味もない。「開き直って投げるしかなかった」という青木の4球目は直球だった。

 外野フライ狙いの西武の代打黒瀬春樹内野手は迷わず手を出した。当たりは痛烈だったが、打球は吸い込まれるように、二塁ベースの前を守っていた小窪“左翼手”の正面へ。小窪から石原慶幸捕手に転送され、次に喜田剛一塁手へ。なんと7―2―3のダブルプレーが成立。プロ野球史上でもなかなかない珍しい併殺の形は、広島ベンチの意図が十分達成された最高の結果となった。

 ブラウン監督の奇策は4度目にして初めて的中した。どの選手も緊張するプレーだったが、まずはゴロをさばいた小窪は「飛んでくればホームに投げるだけ。開き直っていた。内野5人?さすがに人生初めてでした」と驚くばかりだった。

 サヨナラの好機を逃し、7回まで2点リードの試合を勝てなかった西武・渡辺久信監督もこれには苦笑いするしかなかった。「相手は捨て身の戦法をとった。そこに飛んでしまったら仕方がない。でも、あんなにハマってしまうなんて…。普通なら当たりもコースも完全にヒット。ついてなかったとしか言いようがない」。落ち込んだのは打った黒瀬。「打った瞬間、“やっちゃった”と…。あれなら三振した方が良かったかな」とうなだれるしかなかった。

 してやったりはもちろんブラウン監督。「最後の手段。うまくいったよ。青木の投げたコースと高さが少しでも違っていたら、負けていたところ。最高の結果だ」。3連敗を免れた指揮官は胸をなでおろした。

【2011/6/14 スポニチ】
arrow
arrow
    全站熱搜

    ht31sho 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()