ロスの豪邸へ片道2千万円かけ





 globeや華原朋美、安室奈美恵らの楽曲をプロデュースし、1990年代の音楽界を席巻した音楽プロデューサー、小室哲哉(49)が個人投資家から5億円をだまし取った疑いが強まり、大阪地検特捜部は4日、詐欺容疑で逮捕した。CDの総売り上げ1億7000万枚、100億円を稼ぎ出したといわれた栄華から男を転落させたのは計180億円を霧消したともされる壮大な浪費癖だった。



 手掛けた曲は95-98年まで4年連続で日本レコード大賞を受賞。96年だけでCDを1500万枚以上売り、一時はCD売上高400億円を超えた。96、97年度の年収は20億円台に上り、高額納税者番付で連続全国4位となった。過去20年間の番付を元に、あるテレビ番組が試算した生涯収入は96億6000万円で芸能界トップ。「日本の音楽史上最も稼いだ男」の異名を得た。



 金遣いの荒さも半端でなかった。豪邸を構えた米ロサンゼルスに行くとき、片道だけで2000万円かけ、ファーストクラスを全席貸し切った。移動には自家用飛行機を多用していた時期もある。



 ロスのほか、ハワイにも豪邸やスタジオ、クルーザーを所有し、自宅前には、2億5000万円のフェラーリやポルシェ、ベンツなど高級外車がズラリと並んだ。



 母校、早稲田実業学校(東京・国分寺市)にも約10億円をポンと寄付。同校には2001年、広さ600平方メートルの「小室哲哉記念ホール」が建てられ、小室の金の手形が飾られた。同年、創立100周年の記念歌「ワセダ輝く」の作曲も手掛けた。



【アジア進出に失敗、70億円損失】



 その一方で、アジア進出の野望をきっかけに栄光に陰りが差し始める。98年に香港の会社と共同で音楽関連企業「ロジャム」を設立したが、海賊版の横行もあって同社は業績が伸び悩んで経営が悪化。香港で上場した株価も大暴落し、70億円もの損失を出したとされる。消えた生涯収入100億円、負債を75億円以上と勘案すると、浪費の総額は180億円に上るとみられる。



 「時代の移り変わりを読めず、放蕩(ほうとう)生活から抜け出せなかったのだろう」。小室の最盛期を知る芸能関係者はこう振り返る。「世間が求める音楽とズレができ、人気にも陰りが出始めた」とも。



 01年に結婚、02年に離婚した歌手、吉田麻美(33)への7億円もの慰謝料が重くのしかかるようになる。麻美は「小室が毎月支払うことで合意しているマンションの賃貸料、娘の養育費の支払いが昨年8月から滞っている」と週刊誌に告白。現在の夫人のKEIKO(36)が大分出身なことから買って出たサッカーJ1大分トリニータのスポンサー料7000万円も05年9月には滞納していたことも発覚した。



 いまだに1-2億円の印税収入があっても巨額の負債の前に焼け石に水。「浪費癖が直らないから借金は膨らむばかり」(関係者)だった。別の音楽関係者によると、「自身の音楽原版権をたたき売っている」というウワサが流れるようになったという。



 ここ数年は栄華の象徴だった海外の別荘、愛車のベンツ、スタジオ機材などを二束三文で切り売りしたり、知人らに数千万円の借金を頼み込むなど、金策に走るその場しのぎの生活を送るほかないまでに転落していた。



 「小室氏の借金と生活の困窮ぶりは見ていて明らか。いつか金銭絡みの事件を起こすのではないかと思っていた…」。音楽関係者はこう語った。





【音樂】栄光一転、極貧へ…食事は弁当、ハンバーガー、ピザ



無類のアイドル好き



 日本の音楽界の頂点を極めた小室哲哉。たぐいまれな音楽の才能を絶賛されながらも、ここ最近は困窮ぶりがたびたび伝えられ、かつての栄光は見る影もなく消え去っていた。



 小室は東京都出身。3歳からクラシック音楽に親しみ、10代から作曲活動を始めていた。1983年5月に宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成。小室のコンピューターを駆使した斬新なサウンドは注目を集めた。86年1月、渡辺美里に提供した「My Revolution」がチャートで1位を獲得、バンドも87年、シングル「Get Wild」が50万枚のヒット。88年にはNHK紅白歌合戦に初出場した。



 94年にバンドを一時解散、音楽プロデューサーとしての活動に軸足を移すと、trf、H Jungle with t、安室奈美恵、華原朋美ら「小室ファミリー」と呼ばれたアーティストたちが軒並みミリオンヒットを記録。自身も95年に結成したglobeでヒット曲を連発。96年4月にはオリコンシングルチャートで1位から5位までを小室プロデュース曲で独占した。





 「TKサウンド」の黄金時代を裏付けるように、小室は高額納税者番付の常連になった。96、97年と2年連続で高額納税者番付の第4位になり、推定年収はそれぞれ20億円、23億円に。華原との交際もクローズアップされ、このころが公私ともに絶頂期だった。



 しかし、転落の引き金はこのころすでに引かれていた。念願のアジア進出に乗りだそうと96年12月、香港に合弁会社「TK NEWS」を設立。2年後に「ロジャム」と改称して音楽や映画のコンテンツ販売を手がけたが2004年に撤退。多額の負債を背負った。



 私生活も乱れた。「無類のアイドル好き」と周囲から言われるほど女性遍歴も多く、87年12月に元アイドルの大谷香奈子と結婚。92年に離婚したが、その後、華原との仲が取りざたされ、98年秋に破局している。華原はのちに自殺未遂を引き起こした。



 2001年5月には、KABA.ちゃんらと3人組ユニット「dos」でダンス・コーラスを務めた吉田麻美と“出来ちゃった婚”。9月には長女が生まれたが、翌02年3月、わずか10カ月で離婚した。その7カ月後にはglobeのKEIKO(KCO)と電撃結婚して周囲を驚かせた。



 この結婚のウラでは吉田への10億円とも7億円とも言われる慰謝料支払いが滞っていた。吉田は3年前、週刊誌に「慰謝料として私と娘が住むためのマンションの賃貸料、娘が成人するまでの養育費をそれぞれ月払いの分割で払うことで決着しました」と明かし、2年ほどで家賃と養育費の振り込みがストップしたと暴露している。



 肝心の音楽面も21世紀になると一気に急降下した。



 大ブームの反動かTKサウンドは全く関心を集めなくなった。



 01年からは吉本興業とマネジメント契約を結んだが、さしたる活動もなく07年6月に契約満了。妻のKEIKOは今年3月にTBS系のテレビ番組で「食事はオリジン弁当、ハンバーガー、ピザのローテーション」と極貧生活ぶりを明かすなど、小室容疑者の窮乏ぶりは周知の事実となっていた。



 今月1日、埼玉のFM局「NACK5」開局20周年記念番組に出演した小室は、20年の活動を振り返り「前半10年と後半10年は全然違う。98年からの10年はなかなか曲が出てこなかった」と苦悩を語っていた。一方で「作曲数は来年には1000曲にいくんじゃないか」とも豪語していた。





【音樂】小室、離婚へ…妻・KEIKOの実家に借金の催促も



前妻、吉田麻美は憔悴



 小室は、現在の妻で音楽ユニット、globeのボーカルとしてともに活動してきたKEIKO(36)と離婚することが濃厚になった。



 KEIKOは2002年の結婚以来、夫を支えてきたが、ついには料亭を営む大分の実家に借金の催促がくるまで泥沼化。今年3月にKCOのソロ名義で活動を開始するなど、金策に走り回ったものの、最悪の事態は防げなかった。



 豪華絢爛な5億円披露宴から6年。同じ額の詐欺容疑がもとで、愛する夫が逮捕される転落の人生にショックは計り知れない。



 大分・臼杵市で1905(明治38)年創業の老舗ふぐ割烹「山田屋」を営む実家にも、借金返済を催促する電話が掛かってきていたという。



 KEIKOの母親はサンケイスポーツの取材に「昨年の夏ころから、投資家の人から電話がよくありました。小室さんには伝えたが、事務所から『心配しなくていいですから』といわれていましたので…」と言葉少なに明かしている。



 芸能リポーターの梨元勝氏は「事件が表面化したことで、これ以上、実家に迷惑を掛けられないことから、離婚に踏み切るのではないか」と話している。



 一方、離婚した吉田麻美については「現在、海外で仕事しているが、小室の事件を知り、かなり憔悴しているようだ」(梨元氏)という。



【2008/11/4 ZAKZAK】
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