(16日高校野球、関東一1―0中京大中京)

 快音の後、時が止まったような静寂。左翼の青空を飛ぶ白球を目で追いながら、中京大中京の上野は悟っていた。

 「打たれた瞬間、入ったなと」。九回1死、長嶋への初球。シュート回転して真ん中に入った134キロをとらえられた。「全然、受け入れられなくて。実感もなくて」。静寂の後に訪れた大歓声の中、腰に手を当て、しばらく固まったままだった。

 エースとは何か、主将とは何かを、その投球で語った。「一球一球集中し、絶対に抑える」。140キロ前後の直球が低めに伸びる。味方が好機を作りながら得点できない中、五回まで被安打0で援護を待った。

 関東一の顔、1番オコエに対しては「絶対、内角」と激しく胸元を突く。六回のピンチでは直球を7球続けた後、チェンジアップで三振に。七回2死一、三塁では、中学時代にバッテリーを組んでいた鈴木から空振り三振を奪った。

 「上野と心中のつもりでやってきた」と高橋監督は言う。「自分の力でチームを甲子園に連れていくという意識でやってほしかった」という期待に、5年ぶりの出場で応えた。甲子園では全3試合に完投。全国最多の選手権7度の優勝を誇る中京の歴史に、77、78個目の白星を加えた。

 捕手の伊藤は言う。「あれは失投ではない」と。上野が打たれたのだから、「仕方がない」のだと。

 上野は涙が止まらない。帽子を目深にかぶって球場を去る背番号1に、360度から拍手が降り注ぐ。「日本一」の宿命を背負って投じた127球が、見る者すべてを魅了した。(山口史朗)

 ●高橋監督(中) 「最後、バッテリーが泣いている姿を見て、『もっとやれることがあったんじゃないか』と考えた」と声を震わせる。

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