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【8月23日】2002年(平14) 

 【巨人5-3阪神】ベンチを飛び出した時にはもうケンカモードだった。「今のアウトじゃねぇか!どこ見とるんじゃ!このボケがっ!」。阪神・星野仙一監督は血相を変えて一気にまくし立てた。

 ボケとまで言われた上本孝一一塁塁審も黙ってはいない。即刻、右腕を高く挙げ「退場!」を宣告。星野監督は「バカヤロー!」と捨てゼリフを吐いて、上本塁審に背を向けてしまった。

 退場宣告をした上本塁審の背後から巨体が突進してきた。「何だお前、アウトじゃねぇか。オイ!」と怒鳴りながら、上本塁審を2度両手で突き飛ばしたのは、阪神・田淵幸一チーフ打撃コーチ。星野監督と一心同体、指揮官に何かあった時は体を張って守ると言ってはばからなかった同級生が、興奮して判定を下した審判に手を出してしまった。顔が真っ赤に紅潮した上本塁審は再度右腕を上げた。「退場!退場!」。

 パ・リーグでは80年7月5日に南海の広瀬叔功監督、新山隆史投手コーチ、片平晋作一塁手の3人が一気に退場になったことはあったが、セ・リーグで監督、コーチが同時に退場を宣告されたのは半世紀以上の歴史で初めて。星野監督は中日監督時代の87年5月2日、広島での広島4回戦で初退場処分を下されてから通算5度目だったが、田淵コーチは現役、ダイエー監督時代を通じて初めてのことだった。

 阪神のトップ2人が激高した問題のシーンは3-3の同点で迎えた6回。1死二塁で巨人6番仁志敏久二塁手の打球は三ゴロになった。片岡篤史三塁手が捕球し、ジョージ・アリアス一塁手に送球。難なく2死になるところだったが、二塁走者の斉藤宜之右翼手がこの間に三塁へ走った。アリアスが捕球すると、素早く三塁へ投げたが間に合わず、一塁も「アリアスがベースを離れたのが早い」(上本塁審)ということでセーフの判定。一気に1死一、三塁のピンチとなってしまった。アリアスの足が早くベースから離れたかどうかを巡っての阪神側の抗議が、首脳陣2人同時退場を招いた。

 星野、田淵の退場で阪神ナインが燃えたかといえば、結果は逆だった。退場直後、谷中真二投手が川中基嗣三塁手に中前適時打を打たれ、勝ち越しの1点を奪われると、さらに押し出しで追加点を許し勝負あり。阪神は5割復帰、3位浮上のチャンスを逸し、この年4位で10年連続のBクラスとなった。

 星野監督には連盟から厳重戒告と制裁金10万円が、田淵コーチにも厳重戒告と20万円が課せられた。一夜明けて星野監督は言った。「こっちに自信があったら、もっとうるさく言っとる。選手が抗議してたら、監督としては行ってやらないかん。あの判定?(セーフ)で正しいんじゃない。退場も間違ってないよ」。

 判定そのものよりも負けられない試合に選手の気持ちを鼓舞しようとしての覚悟の退場だった。巨人との試合には結果として結びつかなかったが、監督も一緒に戦ってくれているという思いは、負け癖のついたタイガースナインに伝わり、翌03年の18年ぶり優勝に繋がった。


【2009/8/23 スポニチ】

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