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 ◇“次”狙って三塁打急増

 9日のオリックス戦(甲子園)で奪った2点に、走塁への高い意識が現れていた。

 四回、一塁走者の金本は、葛城の右前打であわてた右翼手・浜中がもたつく間に、すかさず三塁へ。浜中の三塁送球が乱れると、今度は葛城も機敏に二塁に達した。その後、鳥谷の浅い左犠飛で1点目。その間に三塁を陥れた葛城の走塁は、続く矢野の犠飛で生きた。

 岡田監督は「なかなか連続犠飛で2点は取れんやろ」と誇る一方、「最近じゃ(好走塁に)ナイスという声も聞かんな。当たり前になってきたんと違うか」と付け加えた。

 今季、阪神の“走”へのこだわりを象徴するデータに「19三塁打」がある。昨年の倍以上のペースで、リーグ2位のヤクルトを大きく引き離す。三塁打に必要な打球を見極める判断力と、常に次塁を狙う積極性が、全員に浸透した証しだ。

 例えば、3月28日の開幕戦。四回、金本の右翼への当たりに、一塁走者の新井が和田三塁コーチの制止を振り切って一気に生還。本塁送球を予期した金本も果敢に駆け抜け、今季チーム初の三塁打を記録した。果敢な走塁が好機を広げた典型例といえる。

 攻撃的な走塁の原点は、昨年7月の中日戦に端を発する。五回1死満塁から右前打を放った金本が、二塁走者の鳥谷が本塁生還をためらったことに「あのヒットで一人しか還ってこれないなんて、もったいない」としっ責した。この一言でチーム全体が引き締まり、春季キャンプでは、鳥谷が赤星を質問攻め。開幕後は平野(右ふくらはぎ肉離れで離脱中)、新井、そしてベテランの金本自身もが、試合後いつも泥だらけでロッカーへ引き揚げてくるようになった。

 新井は言う。「暴走と好走塁は紙一重かもしれないけど、僕たちはその紙一重で戦っている」。勝つために、そして優勝するために何をすべきかは分かっている。汚れたユニホームはそう訴えている。(この連載は和田崇が担当しました)

毎日新聞 2008年6月26日 大阪朝刊
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