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<阪神2-1ヤクルト>◇28日◇甲子園

涙が出ました。球児の激投、そして激打、激走。ナゴヤドームで3連敗を喫して戻った甲子園。
負ければどこまでもいやなムードになるヤクルト戦も相変わらず打線が爆発せず、苦しい展開に。だが同点で登板した藤川は9、10回2イニングを無失点に抑え、サヨナラ勝ちで勝利投手となった。9回には遊撃への深いゴロで今季初安打も放った球児。連敗脱出のヒーローは間違いなくキミだ。

ベース手前で足がもつれたが、藤川は前進を止めなかった。攻めの継投で登った同点の9回表を抑えた後。1死から当然のようにバットを握り、打席に立った。4月23日巨人戦(東京ドーム)以来で、ストッパー転向後は初となるアットバット。簡単にアウトを献上する気はなかった。初球の外角140キロにバットを当て、三遊間に転がす。執念の走塁で塁に出た。

「いやあ、走り込みが足りないわ。走ったからさすがに疲れました。手がしびれた? 全然。ヒットになりましたから」

プロ4本目の安打も、得点にならなければ10回表のマウンドが待っている。代走を送れない状況で、今度はサヨナラの走者に徹した。赤星の投前バントで二塁に、関本の左前打で三塁まで駆けに駆けた。結局、ホームは踏めなかったが、それなら本業に戻り、延長10回表にゼロを刻むまでだった。

「まだまだ勝たなアカンのです。きょうも、あしたも。そう思って投げていました」

自分が投げるときは、チームが勝つとき。そう信じているから、6月27日広島戦以来の2イニング目にも、打って走っての攻撃参加にも全力で臨めた。9回はリグス、10回は田中浩に安打を許した。10回は自らの野選で1死一、二塁とピンチを広げた。それでも火の玉ストレートに魂を込め、じっくりと1アウトずつ積み重ねていった。

オールスターの速球勝負で名を挙げて、中日との首位攻防戦では3戦とも出番がなかった。全国区の注目度となり、満を持しての後半戦初マウンド。打者9人への37球はすべて、代名詞となった速球だった。

この日、名古屋から移動の新幹線は、早朝の切符にチェンジした。いったん自宅に戻り、いつものようにマイカーのハンドルを握って甲子園に向かった。「1人になる時間が、大切なんです」。トラのクローザーになるまで、徐々にテンションを高める孤独な儀式。中日に3連敗してゲーム差が開いたことなど、わずかな動揺も与えなかった。

「後半戦スタートで3敗して、きょうは何としても勝ちたかった。球児は2回いかせるつもりだった」。岡田監督は勝負をかけていた。実らせたのは、豪腕だけでなく、攻撃でも結果を追い求めた藤川だ。

こんなに活躍して、さらに言う。「大きな1勝? いやこれで安心するわけじゃない。ファンにはその先が見えていると思うのでね」。1勝に浮かれ、1敗に沈んでいるヒマはない。逆転の連覇まで、藤川は止まらない。【町田達彦】

【2006/7/29 大阪Nikkansports】
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