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【10月27日】1985年(昭60)
【阪神2-1西武】本塁打54、勝利打点22。阪神が21年ぶりにセ・リーグを制覇した85年、ランディー・バース一塁手のバットで勝った試合を虎党は何度もその目で見てきた。一方で、バースの“守備”で勝った、といえる試合はこのゲームをおいて他に見当たらないのではないか。
西武との日本シリーズ第2戦。敵地で初戦に勝った阪神は、2戦目も石毛宏典遊撃手の先制本塁打で1点を奪われたが、すぐにバースが2試合連続2号ツーランを高橋直樹投手から放ち逆転した。1、2戦全得点の5点はすべてバースが叩き出したものだった。
この逆転打よりも、価値があったかも知れないチームを救ったプレーが、7回裏一死一、三塁でのバースのフィルディングだった。
カウント1-2。打者辻発彦二塁手にリッチ・ゲイル投手は、外角高めのストレートを投げた。待ってました、とばかり辻は一塁バースの方向へプッシュバント。西武得意の攻撃だ。
三走は俊足の秋山幸二右翼手。阪神のウイークポイントはバースの守りであることは、知り尽くしている。同点は間違いない、と誰もが思った瞬間、猛然とダッシュし素手でボールを捕ったバースはバックホーム。「ファースト!」と一塁送球を指示した木戸克彦捕手はビックリ。しかも、走者が突っ込んでくる位置へ絶妙な返球だった。
「アウト!」。久保田治球審のコールがフィールドに響いた。
「西武はプッシュが多いとコーチから聞いていた。ラッキーだった。球がはねずに転がってくれたからね」。バースは控えめにファインプレーを振り返ったが、この予想外のプレーに、沈着冷静な西武・広岡達朗監督の表情は険しくなった。試合終了後、報道陣にバースの好プレーのことを問われると「あのプレーについては何も話したくない」と質問を遮った。
地元で連勝、最低でも1勝1敗で甲子園決戦に臨もうとした知将の計算は完全に狂い、ゲイルの後を受けた福間納、中西清起両投手のリレーにかわされ、西武は痛い連敗。このシリーズ、結局2勝4敗で落とし、阪神に2リーグ分裂後初の優勝をもたらした広岡はフロントとの確執もあり、シリーズ終了後に監督の座を辞した。
「きょうもオレのおごりだ」。第2戦終了後の東海道新幹線車内のビュッフェ。ゲイルは登板した日にバースが本塁打を打つと、いつもビールを1本おごっていた。85年、シリーズと合わせて34試合のゲイルの登板のうち、バースが打った本塁打は18本を数えた。この日は本塁打に加え、あの超美技のお礼にゲイルがもう1本ビールを追加したのは言うまでもない。
【2007/10/27 スポニチ】
【阪神2-1西武】本塁打54、勝利打点22。阪神が21年ぶりにセ・リーグを制覇した85年、ランディー・バース一塁手のバットで勝った試合を虎党は何度もその目で見てきた。一方で、バースの“守備”で勝った、といえる試合はこのゲームをおいて他に見当たらないのではないか。
西武との日本シリーズ第2戦。敵地で初戦に勝った阪神は、2戦目も石毛宏典遊撃手の先制本塁打で1点を奪われたが、すぐにバースが2試合連続2号ツーランを高橋直樹投手から放ち逆転した。1、2戦全得点の5点はすべてバースが叩き出したものだった。
この逆転打よりも、価値があったかも知れないチームを救ったプレーが、7回裏一死一、三塁でのバースのフィルディングだった。
カウント1-2。打者辻発彦二塁手にリッチ・ゲイル投手は、外角高めのストレートを投げた。待ってました、とばかり辻は一塁バースの方向へプッシュバント。西武得意の攻撃だ。
三走は俊足の秋山幸二右翼手。阪神のウイークポイントはバースの守りであることは、知り尽くしている。同点は間違いない、と誰もが思った瞬間、猛然とダッシュし素手でボールを捕ったバースはバックホーム。「ファースト!」と一塁送球を指示した木戸克彦捕手はビックリ。しかも、走者が突っ込んでくる位置へ絶妙な返球だった。
「アウト!」。久保田治球審のコールがフィールドに響いた。
「西武はプッシュが多いとコーチから聞いていた。ラッキーだった。球がはねずに転がってくれたからね」。バースは控えめにファインプレーを振り返ったが、この予想外のプレーに、沈着冷静な西武・広岡達朗監督の表情は険しくなった。試合終了後、報道陣にバースの好プレーのことを問われると「あのプレーについては何も話したくない」と質問を遮った。
地元で連勝、最低でも1勝1敗で甲子園決戦に臨もうとした知将の計算は完全に狂い、ゲイルの後を受けた福間納、中西清起両投手のリレーにかわされ、西武は痛い連敗。このシリーズ、結局2勝4敗で落とし、阪神に2リーグ分裂後初の優勝をもたらした広岡はフロントとの確執もあり、シリーズ終了後に監督の座を辞した。
「きょうもオレのおごりだ」。第2戦終了後の東海道新幹線車内のビュッフェ。ゲイルは登板した日にバースが本塁打を打つと、いつもビールを1本おごっていた。85年、シリーズと合わせて34試合のゲイルの登板のうち、バースが打った本塁打は18本を数えた。この日は本塁打に加え、あの超美技のお礼にゲイルがもう1本ビールを追加したのは言うまでもない。
【2007/10/27 スポニチ】
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