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【4月18日】2007年(平19) 

 【楽天6―2ソフトバンク】やはり並みの高卒ルーキーではなかった。プロ初登板で2回途中で6点を奪われKOされた相手に、今度は2失点完投勝利。「もう最高。プロで勝つことは簡単じゃない。最初にやられた相手だし、やっぱり嬉しいです」。

 まだ18歳、つい1カ月半前に高校を卒業したばかりの楽天・田中将大投手がやっと表情を崩した。140球を投げ、9本の安打を浴びるも四球はわずか1つ。逃げずに堂々勝負した結果が、13奪三振の数字に表れた。5回まで無安打の楽天打線に火をつけたのも、ソフトバンクの投手陣の柱である杉内俊哉投手に一歩も引かず、投げ合う背番号18のたくましい背中に燃えるものを感じたからだった。

 それでも立ち上がりはフラフラだった。先頭の本多雄一二塁手から3連打で1点を先制されると、4番松中信彦一塁手も歩かせた。無死満塁。紀藤真琴投手コーチがマウンドに行き、田中に気合いを入れ直すと我に返った。「逃げてどうする。思い切り腕を振れ」。

 右腕は見違えるように大胆かつ冷静な投球になった。5番小久保裕紀三塁手、6番大村直之中堅手は決め球にストレートを使い連続三振。7番ブキャナンには、速球狙いの裏をかいてスライダーでこれも三振に仕留めた。無死満塁からの3者連続三振。KOされた嫌な過去は消え、田中の投球は180度変った。

 特に主砲・松中からは四球の後、3打席連続三振を奪った。5回2死一、二塁ではスライダーで空振り三振。8回1死二塁ではフルカウントからの渾身のストレートで見逃し三振。3年ぶりの1試合3三振に「田中?コントロールが良かったな。見極めが難しかった」とパ・リーグのホームランキングは静かに話したが、内心はこう思っていた。「やっかいだな」。

 若く勢いがある球の上に、気持ちで逃げない投手になった。つい3週間前のかわいい高校生ルーキーは、たった3試合を経験しただけでプロの投手になっていた。

 松中が感じた通り、4試合目の登板で精神的にも強くなった。「余裕ができたことが大きい。3試合投げてみて、いろいろ分かったことがある」。ガムシャラに投げるだけだったが、配球やタイミングの外し方を自分なりにつかんでいた。その1つがカーブの使い方。親指には血マメができていたため、必要以上にストレートを多投せず「カーブを有効に使った」と田中。ルーキーの未勝利投手が簡単にできる芸当ではなかった。

 いつ代えようか…。ベンチの野村克也監督はそればかりを考えていた。8回に1点を許し2点差。9回はリリーフを用意していた。が、その裏に指名打者のフェルナンデスが2点本塁打を放った。指揮官の腹は決まった。将来チームを背負って立つ投手。先発完投ができる投手にならなければ意味がない。9回も田中はマウンドに上がった。「マー君は何か持っているね。何か強い星の下に生まれている感じだ。ケチの付けようがない」。いつも辛口のノムさんが舌を巻いた。

 ドラフト制後、高校出の新人投手で4月中に勝った投手は田中で9人目だが、完投勝利は66年の東映・森安敏明、67年の阪神・江夏豊だけで40年ぶりの快挙。奪三振13は快速球でならした、森安の6個、江夏の10個を上回る数字だった。

【2011/4/18 スポニチ】
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