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【3月22日】2002年(平14) 

 【阪神3-1中日】一触即発の雰囲気漂う、小雨の西京極球場は阪神・金沢健人投手が投げた内角ストレートで“小噴火”した。

 8回表2死一塁で打者は中日・谷繁元信捕手。金沢の真っ直ぐが谷繁の左手をかすめた。唇をかんで金沢に向かって詰め寄ろうとした谷繁。杉永政信球審がなんとか制止し、ことなきをえたが、谷繁の怒りは収まらなかった。

 中日・山田久志監督は代走に柳沢裕一捕手を送り、三塁ベンチに戻る谷繁が帰り際にホームにいる阪神・吉本亮捕手を一瞬見た時だった。「何や!文句あんのか!?」。吉本が谷繁に怒鳴った。

 谷繁も黙っているわけにはいかない。1歳年上の吉本に向かって行くと、ベンチから仁村徹コーチが“加勢”し吉本に言った。「お前と谷繁がやられるんじゃ、わけが違うんや!」。この言葉が合図だったかのように、両軍ナインがベンチから飛び出した。つかみ合いにこそならなかったが、マウンド付近でにらみ合いながら罵声の応酬。審判団が止めに入り、大事には至らなかったが、どこで乱闘になってもおかしくはなかった。

 「熱くなっとらんよ。盛り上げているだけや」と苦笑いしているのは、阪神ベンチの星野仙一監督。“乱闘”といえば、真っ先にすっ飛んで行く指揮官だが、ここは冷静だった。が、それだけに不気味だった。

 この試合、実は先にぶつけられていたのは阪神だった。5回に坪井智哉外野手が、7回には吉本自身が死球を食らっていた。その“報復”ともとれる谷繁への“直撃”だったが、星野監督からすればそれは阪神が見下されているということに他ならなかった。

 「坪井がぶつけられ、てめえ(吉本)もぶつけられて、吉本もおもしろくなかったんやろ。その意味じゃ、まだ足りんな。このオープン戦で何回ぶつけられとんのや」。相手に挑発されてもおとなしいタイガースナインに星野監督はもの足りなさを感じていた。

 オープン戦とはいえ、02年初の中日-阪神戦。星野は前年まで中日を指揮していたが、ライバル阪神への移籍し、しかも懐刀の島野育夫ヘッドコーチも引き抜いた。星野は解任されたという話もあったが、いずれにしろ、ドラゴンズを引っ張ってきた功労者である星野と中日との間には深い確執があっても不思議ではなかった。それを代弁したかのような乱闘だったが、闘将星野によって変わりつつあった阪神を脅しておかなければ、という意図も中日が与えた2死球には含まれていたような気がする。

 この試合、阪神はジョージ・アリアス一塁手の本塁打などで3-1で勝ち、95年以来7年ぶりのオープン戦優勝を決めた。オープン戦で優勝したチームはペナントレースでは勝てないというジンクスがあるが、80年からの成績を見てみると、オープン戦優勝チームがそのままリーグ優勝をしたケースはわずか3回。阪神は過去3度シーズン優勝していたが、62年は3位、64年は8位、85年は7位とオープン戦Vではなかった。

 開幕戦で巨人を倒して以後、7連勝を飾り、64年ぶりの球団タイ記録の快進撃で、今年こそと思われたが結果は4位。実はこの3・22の“続編”のゲームが阪神の快進撃を止めたと言っても過言ではない。

 4月16日、豊橋での中日-阪神1回戦は中日が7-3で勝ったが、7回裏、中日に勝ち越し点を与えたのは吉本のパスボール。因縁の谷繁がダメ押しの走者一掃二塁打を放った。谷繁はオープン戦の騒動のことを聞かれると「一生懸命野球をやっているだけ。そっとしておいてください」と、刺激することを避けたが、この年の両チームの対戦はいつもどこかピリピリムードが漂っていた。


【2009/3/22 スポニチ】
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