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【4月7日】1999年(平11) 

【西武5-2日本ハム】完封勝ちをしたヤツもいた、ノーヒットノーランまでやってのけたヤツまでいた。しかし、デビュー戦でプロ野球界で史上6番目(当時)に速い155キロの直球を投げ込んだ投手はこの男だけだった。

 東京ドームでの日本ハム-西武2回戦。西武の先発はルーキー、松坂大輔投手。初回、日本ハムの3番・片岡篤史三塁手への5球目は155キロの真っ直ぐ。強振した片岡のバットは空を切り、空振り三振に終わった。155キロについて松坂は「球速は見ていませんでした。ベンチで言われて自分でも驚いた。いいフォームで投げられたから自然に出たのでしょう」と淡々。一方の片岡は「びっくりしたで。でも、久々にゾクゾクする投手や」。4打数無安打2三振に牛耳られたビックーバン打線の中軸は完敗に脱帽したが、それ以上に次も対戦したと思わせる新星の出現を歓迎した。

 6回にはノーヒットノーランの夢を砕く中前打、8回にはプロの意地をみせつけたセンターバックスクリーンへの2点本塁打をたたき込んだ小笠原道大一塁手は「抑えられたままじゃこの先いいようにやられる。確かに速いけど、それほどじゃない」。8回132球、被安打5奪三振9、2失点でのプロ1勝を挙げた新人をまだまだと評したガッツ。いい投手だからこそ調子に乗らせてはいけない。コメントが報道されることを意識した強気の発言だった。

 小笠原をムキにさせるほど、松坂のマウンドさばきはルーキーとは思えない堂々たる風格があった。5回二死、フランクリン右翼手への4球目の151キロのストレートは内角をえぐった。これにフランクリンは激怒した。攻略の糸口が見つからない中で、松坂を動揺させ、ペースを乱そうとする明らかな挑発行為だった。ムッとしてにらみ返す松坂。乱闘寸前となり、両軍ベンチから選手が飛び出した。

 マウンド上で西武・橋本武広投手に頬をつかまれ「落ち着け」と諭され、笑顔を浮かべ一件落着に見えたが、強気な18歳はその直後2球続けてインコースへ。結局、四球となったが、この負けん気の強さに「あれで18歳か。勝負度胸がええな。モノが違う」と現役時代、シュートで内角攻めをして外国人選手とバトルを繰り広げた西武・東尾修監督も舌を巻いた。

 真っ直ぐだけではない。130キロ前後のスライダーなどの変化球を投げ分けるピッチングにはベテラン捕手をも感心させた。マスクをかぶった中嶋聡捕手は言った。「150キロと120キロ。真ん中のない投手。簡単に打てないよ」。

 衝撃のデビュー戦を白星スタートで飾った松坂はルーキーイヤーで25試合16勝5敗、防御率2・60。新人王はもちろん、高卒新人投手としては54年(昭29)、福岡・門司東高(現門司高)出身の南海・宅和本司投手以来の最多勝投手に。ベストナイン、コールデングラブ賞まで獲得。甲子園の優勝投手は大成しないというジンクスが球界にはあるが、それを完全にはねのけた松坂は、その後数々の伝説を作った。“平成の怪物”は07年に活躍の場をメジャーリーグに求め、さらなる伝説を積み上げようとしている。

【2008/4/7 スポニチ】
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