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 日本が誇る安打製造機として数々の記録を打ち立ててきた米大リーグ、マリナーズのイチローが日米通算3000安打を達成した。輝かしい実績とともに、そこには「孤独な戦い」を続けるイメージがつきまとう。
 その裏には、所属チームの苦戦がある。1992年に加わったオリックスでは95、96年とパ・リーグを連覇し、96年には念願の日本一に輝き、イチローは栄冠に大きく貢献した。しかし、その後のチームはじり貧。イチローの打撃だけが注目される日々が待っていた。
 その傾向は海を渡っても変わっていない。最初の2001年は実に116勝を挙げてア・リーグ西地区を制覇。リーグ優勝決定戦まで勝ち進んだ。ただ、ここをピークに急降下。04~06年は地区最下位に甘んじ、今季も開幕早々に脱落した。
 低迷するチームには、当然不平不満が渦巻く。ある選手が「チームが負けても、ヒットを打てば喜んでいる選手がいる」と暗にイチローを批判したという話も伝えられた。イチロー自身、激しくチームを鼓舞するタイプではなく、進んで日本代表の先頭に立った06年春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はむしろ例外的な姿だった。今のマリナーズが「イチローのチーム」であることは間違いなく、それ故に「もっと前面に出て引っ張ってほしい」という声も理解できる。
 ただ、例えば守りなら、1本の打球に対しても読みや予測、集中を怠らないのがイチローだ。「結局は小さいことの積み重ねが大事」と強調。常に準備と研究を繰り返し、より高いレベルで最善を尽くそうとする姿勢は日本時代から一貫している。その部分で努力が足りない人たちからの批判は、明らかに妥当性を欠く。
 孤高の天才打者は、低迷するチームで奮闘する宿命を背負いながら今後もヒットを量産していくのだろうか。激しく優勝を争う局面で貴重な安打を重ねる姿を見てみたいのも確かだ。

【2008/7/31 時事通信社】
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