close
■マイナーに定着してしまった井川
すっかり、スクラントンの顔になってしまった。デイブ・マイリー監督との師弟関係(?)も3年目で、彼とは通訳を介さないコミュニケーションも多くなった。また、ホームゲームでは帰り際に、いつも大勢のファンからサイン攻めにあっているが、クラブハウスを出る直前、スタジアム勤務の警察官が「ケイ、きょうはファンが多いから大変だぞ!」と外の様子を知らせてくれることもある。スクラントンでは行きつけのレストランもあるし、先日はリハビリ調整中の王建民(日本の学校制度では同級生になる)と食事に出かけたりもした。メジャー3年目、というよりも、マイナー3年目というのがピッタリとあてはまってしまう井川慶だが、これには本人も「ここではすっかり古株になってしまいました」と、苦笑いするしかないようだ。
マイナーリーグは「長くいてはいけないところ」と口にしているし、「一日も早く、メジャーで投げたい」という気持ちも強い。3Aで一緒に開幕を迎えたフィル・ヒューズ、マーク・メランソン、デビッド・ロバートソンらが4月中にメジャー昇格を果たす動きもあったヤンキースだが、現時点では井川にお呼びがかかるような気配はまったくない、と言っていい。調子は上向いているし、同僚たちも「ケイはビッグリーグで投げるべきピッチャー」と口をそろえるが、目には見えない大きな壁が、井川をスクラントンに留めさせている。
■5月に入り、好投見せるも…
4月は4試合に登板し、2勝0敗。しかし本人が「どちらも勝たせてもらった」と振り返る通り、内容は決して良くなかった。キャンプ中は中継ぎとしての役割を担っていたため、先発投手として出遅れた部分もあるだろうが、ストライク先行が裏目に出るなど、4試合で9本塁打を浴び、月間防御率は6.75。だが、5月に入ると、19イニング無失点を続けるなど、修正してみせた。過去2シーズンと比較しても、不安定だった初回の立ち上がりは3者凡退が多くなり、生命線であるチェンジアップの精度も安定感が増した。
また、渡米してから手を加えたセットポジションでの投球フォームも固まり、納得のいく1球、納得のいくアウト、納得のいくイニング、そして納得のいく登板が増えている。スコット・アルドレッド投手コーチが「いま一番ストライクが取れるピッチャー」と太鼓判を押すように四球は減り、被本塁打も今月は1本(現地時間5月19日の登板後時点)と、一発病も解消できたと言っていいだろう。そして、防御率も3点台後半まで低くなってきた。ところが、そんな中、井川は初めて中3日での登板を強いられた。
「中4日と言っても、球数は100くらいに抑えられていますから、キツいというのはないです。5日おきの登板には慣れましたし、(登板が)早く来てほしいと思うようになりましたね。たまに休みが一日入って、中5日になると、それは楽に感じますよ」と話す井川だが、中3日での登板を言い渡された直後は「(プロ入り後は)記憶にない。いや、ないですね」と、思わず首をかしげた。
■中3日での登板が意味するのは?
メジャーリーグではもちろん、選手育成を重んじるマイナーリーグにおいて、中3日というのは非常識と言っていい。ではなぜ、井川は中3日で登板することになったのか。アルドレッド投手コーチは15日の試合後、こう説明した。
「(雨天順延による)ダブルヘッダーの影響だ。だからケイにはきょう(のシャーロット戦)、77球でマウンドを降りてもらった」。
スクラントンは15日と17日に、それぞれダブルヘッダーを行っている。20日は休みだったため、井川は15日のナイトゲームに登板したあと、中5日で21日のポータケット戦に先発すると思われた。19日のコロンバス戦に中3日で先発するなど、思ってもいなかったに違いない。しかも19日は午前11時試合開始で、中3日というより、感覚としては中2.5日が近い。
ダブルヘッダーの影響で、先発投手のやりくりに大きな支障が出たのは確か。だが、こういった場合の判断がマイナーチームの監督、コーチだけで行われることは考えにくい。恐らくヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMが最終判断を下したのだろう。あくまで想像だが、キャッシュマンは例えばロングリリーフができるロバートソンを19日に先発させるのではなく、井川を登板させる決断を下したのではないだろうか。これがヒューズやイアン・ケネディといった若手投手ならどうだっただろうかと思うが、このヤンキースの判断は何を意味しているのか。少なくとも、井川に対する期待というものは感じられない。
アルドレッド投手コーチが「中3日なので、球数は少なめ」と言っていた通り、井川は19日のコロンバス戦に先発し、72球で降板。結果は4回7安打2失点で今季初黒星。言われたところで投げるしかないのは、メジャーもマイナーも同じだが、井川は“見えない壁”を感じつつも「自分は、(メジャーリーグから)いつ声がかかってもいいように、結果を出し続けていくしかないですから」と、その表情はいつものように、淡々としていた。
【2009/5/21 スポーツナビ】
すっかり、スクラントンの顔になってしまった。デイブ・マイリー監督との師弟関係(?)も3年目で、彼とは通訳を介さないコミュニケーションも多くなった。また、ホームゲームでは帰り際に、いつも大勢のファンからサイン攻めにあっているが、クラブハウスを出る直前、スタジアム勤務の警察官が「ケイ、きょうはファンが多いから大変だぞ!」と外の様子を知らせてくれることもある。スクラントンでは行きつけのレストランもあるし、先日はリハビリ調整中の王建民(日本の学校制度では同級生になる)と食事に出かけたりもした。メジャー3年目、というよりも、マイナー3年目というのがピッタリとあてはまってしまう井川慶だが、これには本人も「ここではすっかり古株になってしまいました」と、苦笑いするしかないようだ。
マイナーリーグは「長くいてはいけないところ」と口にしているし、「一日も早く、メジャーで投げたい」という気持ちも強い。3Aで一緒に開幕を迎えたフィル・ヒューズ、マーク・メランソン、デビッド・ロバートソンらが4月中にメジャー昇格を果たす動きもあったヤンキースだが、現時点では井川にお呼びがかかるような気配はまったくない、と言っていい。調子は上向いているし、同僚たちも「ケイはビッグリーグで投げるべきピッチャー」と口をそろえるが、目には見えない大きな壁が、井川をスクラントンに留めさせている。
■5月に入り、好投見せるも…
4月は4試合に登板し、2勝0敗。しかし本人が「どちらも勝たせてもらった」と振り返る通り、内容は決して良くなかった。キャンプ中は中継ぎとしての役割を担っていたため、先発投手として出遅れた部分もあるだろうが、ストライク先行が裏目に出るなど、4試合で9本塁打を浴び、月間防御率は6.75。だが、5月に入ると、19イニング無失点を続けるなど、修正してみせた。過去2シーズンと比較しても、不安定だった初回の立ち上がりは3者凡退が多くなり、生命線であるチェンジアップの精度も安定感が増した。
また、渡米してから手を加えたセットポジションでの投球フォームも固まり、納得のいく1球、納得のいくアウト、納得のいくイニング、そして納得のいく登板が増えている。スコット・アルドレッド投手コーチが「いま一番ストライクが取れるピッチャー」と太鼓判を押すように四球は減り、被本塁打も今月は1本(現地時間5月19日の登板後時点)と、一発病も解消できたと言っていいだろう。そして、防御率も3点台後半まで低くなってきた。ところが、そんな中、井川は初めて中3日での登板を強いられた。
「中4日と言っても、球数は100くらいに抑えられていますから、キツいというのはないです。5日おきの登板には慣れましたし、(登板が)早く来てほしいと思うようになりましたね。たまに休みが一日入って、中5日になると、それは楽に感じますよ」と話す井川だが、中3日での登板を言い渡された直後は「(プロ入り後は)記憶にない。いや、ないですね」と、思わず首をかしげた。
■中3日での登板が意味するのは?
メジャーリーグではもちろん、選手育成を重んじるマイナーリーグにおいて、中3日というのは非常識と言っていい。ではなぜ、井川は中3日で登板することになったのか。アルドレッド投手コーチは15日の試合後、こう説明した。
「(雨天順延による)ダブルヘッダーの影響だ。だからケイにはきょう(のシャーロット戦)、77球でマウンドを降りてもらった」。
スクラントンは15日と17日に、それぞれダブルヘッダーを行っている。20日は休みだったため、井川は15日のナイトゲームに登板したあと、中5日で21日のポータケット戦に先発すると思われた。19日のコロンバス戦に中3日で先発するなど、思ってもいなかったに違いない。しかも19日は午前11時試合開始で、中3日というより、感覚としては中2.5日が近い。
ダブルヘッダーの影響で、先発投手のやりくりに大きな支障が出たのは確か。だが、こういった場合の判断がマイナーチームの監督、コーチだけで行われることは考えにくい。恐らくヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMが最終判断を下したのだろう。あくまで想像だが、キャッシュマンは例えばロングリリーフができるロバートソンを19日に先発させるのではなく、井川を登板させる決断を下したのではないだろうか。これがヒューズやイアン・ケネディといった若手投手ならどうだっただろうかと思うが、このヤンキースの判断は何を意味しているのか。少なくとも、井川に対する期待というものは感じられない。
アルドレッド投手コーチが「中3日なので、球数は少なめ」と言っていた通り、井川は19日のコロンバス戦に先発し、72球で降板。結果は4回7安打2失点で今季初黒星。言われたところで投げるしかないのは、メジャーもマイナーも同じだが、井川は“見えない壁”を感じつつも「自分は、(メジャーリーグから)いつ声がかかってもいいように、結果を出し続けていくしかないですから」と、その表情はいつものように、淡々としていた。
【2009/5/21 スポーツナビ】
全站熱搜