「はらわたが煮えくり返る思いだ…」。JR岡山駅のホームで25日夜、18歳の少年に突き落とされて死亡した岡山県職員、仮谷国明さん(38)の遺族は吐き捨てるように語った。またしても起きた若者による「だれでもよかった」という殺人。仮谷さんは技術系の仕事熱心な公務員で、この日も残業を終えて帰る途中だったという。岡山県庁では同僚が突然の悲報に肩を落とし、事件があったホームでは乗客が衝撃を受けた様子で、顔をこわばらせた。



 仮谷さんは倉敷市内の住宅街にあるアパートで妻と、小学1年、幼稚園の姉妹の4家族。同じアパートに住む主婦(35)によると、自宅前で娘を自転車に乗せて遊ぶなど面倒見の良い父親だったといい、主婦は「どうしてこんなことに」と口をつぐんだ。



自宅を訪れた両親らは「一睡もしていない」と疲れ切った表情。岡山市に住む父親の要さん(70)は、逮捕された少年について「はらわたが煮えくり返る思い」と憤りを口にしながら、「日本は法治国家。罪に服して早く更生してほしい」と訴えた。



 仮谷さんは平成5年に入庁。県の出先機関の備中県民局で土木技師などを経て平成18年4月から現在の県道路建設課に配属された。県道の拡幅やバイパス建設などの現場で指導、監督や予算の取りまとめなどを担当しており、同僚の改良班リーダー、西本靖さん(49)は「5人いる班員の中堅。一番仕事をこなしていたし、若い職員の面倒見もよかった。昨夜も遅くまで仕事をして帰宅する途中だったのに…」と悔しさをにじませた。



 自分の手がけた工事現場は、必ず自分の目で確認し、本庁のある岡山市と県内各地を何度も往復していたという。将来は「現場で大規模なトンネル工事や橋梁(きょうりょう)工事をやってみたい」と抱負を語っていた。来月1日付で地元倉敷市の水島港湾事務所に異動が決まっており、後任への引き継ぎ準備で昨夜も遅くまで資料作りなどをしていたという。



 一緒に残業していた同僚は「数時間前まで元気だった仲間が、あんな事件に巻き込まれ、信じられない」と肩を落とした。



 一方、現場となった岡山駅のホームでは、詰め掛けた報道陣を乗客らが不安そうに見詰めた。事件を知らず「何があったのか」と訪ねる人もいた。友人と旅行中という堺市の大学生、宮井恵子さん(23)は「知らない人を突き落とすなんて信じられない。最近、通り魔事件も多く、周りの人が誰なのか分からないから怖い」。JR岡山駅の関係者は「憤りを感じる。駅としては今後、警備的な対策も強化すべきだろう」と話した。



【2008/3/26 MSN産経ニュース】

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