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熱い男が泣いた。最後の気力を振り絞り、打って、守って、走って…。甲子園が感動に震えた。今季限りで引退する阪神・片岡篤史内野手(37)が、死闘を繰り広げてきたライバル中日を相手に、2安打1打点の活躍。有終の美を飾った。2002年に日本ハムからFA移籍。不振、故障…苦難を乗り越えてきた姿を知るからこそ、虎党は温かい拍手で包み込んだ。PL学園時代の同級生・立浪から花束を受け取り、号泣した片岡。日本ハムも優勝したけど、デイリースポーツ1面は男・片岡の涙をお届けします!
視界がかすんだ。抑えてきた感情が胸から込み上げる。瞳が熱くなった。現役最後の場所は、幼少時代からあこがれてきた聖地。「甲子園でやりたくて8歳で野球を始めて、最後にここで終えられたことが幸せ」。ロッカーへ引き揚げる間際、神様が与えてくれた最高のステージに感謝し、涙を流した。
「縁なんやろうなぁ」。相手はし烈な優勝争いを演じた中日だった。左翼にはPL学園時代の同級生・立浪の姿。1987年に春・夏連覇を成し遂げた仲間だ。「高校時代から一緒に励まし合いながら来た。相手チームでありながら、阪神に来て活躍できなかったけど、良き相談相手だった」。ネット裏で見守った恩師・中村順司元PL学園監督に教えられた「気合と根性」。2つの教えを胸に、互いに支え合ってきた。
最後の打席は七回。フルスイングした打球は、左翼・立浪の頭上を越える二塁打となった。塁上から送った視線の先に、笑みを浮かべる友がいた。立浪に向かって塁上から手を掲げ、最後の瞬間を共有した。五回裏一死二塁の好機では中堅への適時打。大歓声にこたえた。
こらえていた。それでも、熱いものがほおをつたってきた。球児が最後の打者を打ち取り、ベンチへ戻った。出迎えてくれた仲間たちを見つめて、改めて引退することを実感した。阪神、中日の選手が入り交じり、三塁の定位置で胴上げされた。甲子園の夜空に舞うこと5回。今季、優勝争いを繰り広げた2チームを、片岡が1つにした。
試合後のセレモニーでは長男・大空くん、二男・吉平くんから花束を受け取った。「別に野球じゃなくてもいいんや。1つ好きなことを見つけて、それにまい進してくれたらいい」。2人の息子には自分と同じように1つの道を突き進んでもらいたい。スタンドから見つめていた父・寛十郎さんが、そうさせてくれたように-。
場内を1周しながら、球場に響き渡ったサザンオールスターズの「Bye Bye My Love」のメロディー。「高校時代、練習で辛かったときによく聞いていた思い出の曲なんよ」。タテジマのユニホームを着て、思うようにバットが振れず涙にくれたこともあった。やじで胸を痛めたこともあった。それでも「怖かった阪神ファンがこうやって見送ってくれて本当にありがたい」。親友と恩師、チームメート。そして支えてくれた家族とファンに見送られながら、現役生活に幕を閉じた。
立浪も泣いた「人生で一番の友達」
惜別の涙があふれ出る。親友の域を超えた“球友”片岡の現役引退に、中日・立浪は目を真っ赤に染めた。「人生で一番の友達。高校時代から苦しい時、お互いに話し合ったものです。プロでの付き合いも一緒でした。阪神での5年間、いろんな意味で苦労したと思う」
グラウンドで最後の勇姿を見送りたい。立浪は先発を落合監督に直訴した。五回終了時には適時打を放った片岡のもとに左翼の守備位置から駆け寄った。七回には自らの頭上を越える二塁打も見届けた。
「ボクも同じ年で置かれている環境も一緒でしょう。片岡のここまでの頑張りを励みにしたい」。試合後の花束贈呈ではともに号泣し、肩を抱き合った。最後は阪神の選手とともに胴上げにも参加。「これだけのファンの前でセレモニーができた。幸せなことだよ」。立浪からの“最後”の言葉だった。
【2006/10/13 デイリースポーツ】
視界がかすんだ。抑えてきた感情が胸から込み上げる。瞳が熱くなった。現役最後の場所は、幼少時代からあこがれてきた聖地。「甲子園でやりたくて8歳で野球を始めて、最後にここで終えられたことが幸せ」。ロッカーへ引き揚げる間際、神様が与えてくれた最高のステージに感謝し、涙を流した。
「縁なんやろうなぁ」。相手はし烈な優勝争いを演じた中日だった。左翼にはPL学園時代の同級生・立浪の姿。1987年に春・夏連覇を成し遂げた仲間だ。「高校時代から一緒に励まし合いながら来た。相手チームでありながら、阪神に来て活躍できなかったけど、良き相談相手だった」。ネット裏で見守った恩師・中村順司元PL学園監督に教えられた「気合と根性」。2つの教えを胸に、互いに支え合ってきた。
最後の打席は七回。フルスイングした打球は、左翼・立浪の頭上を越える二塁打となった。塁上から送った視線の先に、笑みを浮かべる友がいた。立浪に向かって塁上から手を掲げ、最後の瞬間を共有した。五回裏一死二塁の好機では中堅への適時打。大歓声にこたえた。
こらえていた。それでも、熱いものがほおをつたってきた。球児が最後の打者を打ち取り、ベンチへ戻った。出迎えてくれた仲間たちを見つめて、改めて引退することを実感した。阪神、中日の選手が入り交じり、三塁の定位置で胴上げされた。甲子園の夜空に舞うこと5回。今季、優勝争いを繰り広げた2チームを、片岡が1つにした。
試合後のセレモニーでは長男・大空くん、二男・吉平くんから花束を受け取った。「別に野球じゃなくてもいいんや。1つ好きなことを見つけて、それにまい進してくれたらいい」。2人の息子には自分と同じように1つの道を突き進んでもらいたい。スタンドから見つめていた父・寛十郎さんが、そうさせてくれたように-。
場内を1周しながら、球場に響き渡ったサザンオールスターズの「Bye Bye My Love」のメロディー。「高校時代、練習で辛かったときによく聞いていた思い出の曲なんよ」。タテジマのユニホームを着て、思うようにバットが振れず涙にくれたこともあった。やじで胸を痛めたこともあった。それでも「怖かった阪神ファンがこうやって見送ってくれて本当にありがたい」。親友と恩師、チームメート。そして支えてくれた家族とファンに見送られながら、現役生活に幕を閉じた。
立浪も泣いた「人生で一番の友達」
惜別の涙があふれ出る。親友の域を超えた“球友”片岡の現役引退に、中日・立浪は目を真っ赤に染めた。「人生で一番の友達。高校時代から苦しい時、お互いに話し合ったものです。プロでの付き合いも一緒でした。阪神での5年間、いろんな意味で苦労したと思う」
グラウンドで最後の勇姿を見送りたい。立浪は先発を落合監督に直訴した。五回終了時には適時打を放った片岡のもとに左翼の守備位置から駆け寄った。七回には自らの頭上を越える二塁打も見届けた。
「ボクも同じ年で置かれている環境も一緒でしょう。片岡のここまでの頑張りを励みにしたい」。試合後の花束贈呈ではともに号泣し、肩を抱き合った。最後は阪神の選手とともに胴上げにも参加。「これだけのファンの前でセレモニーができた。幸せなことだよ」。立浪からの“最後”の言葉だった。
【2006/10/13 デイリースポーツ】
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