開幕からの独走で7月22日には早々と優勝へのマジックナンバー「46」を点灯させた阪神。優勝は時間の問題とみられたが、振り返れば、このときが今季のピークだった。8月に入り、北京五輪で新井、藤川ら中心選手が抜けると、チームは全く違うものになってしまう。貧打、踏ん張れない投手陣…。北京組が戻り、9月になっても調子は戻らず、巨人の猛追におびえるばかりだった。阪神の「歴史的V逸」は北京五輪が最大の要因といって過言ではない。(阪神取材班)

 「点を取らなしゃあないやんか。おれに言われてもしゃあないやんか」。岡田監督が声を荒らげた。9月23日、首位を並走する巨人がデーゲームで広島と引き分け、勝てば単独首位となる大事な横浜戦を、おつきあいよく引き分け。打線はわずか3安打で1点しか取れなかった。広沢打撃コーチは疲労の色が日に日に深くなっていく。「打線は水物。いいときも悪いときもある。選手はよく頑張っている」と自らを奮い立たせるように前向きに話すこともあったが、ついぞ打線が破壊力を取り戻すことはなかった。

 〈表I〉は今季の先制した試合と先制された試合の成績をまとめた。注目は先制された試合。前回優勝した2005年でも30勝36敗5分けと負け越したが、今季は開幕から7月までは24勝20敗と5割以上の勝率を誇っていた。リードを許しても新井、金本ら主軸が打って取り返してくれるため、投手陣もプレッシャーを感じずに投げることができる、好循環を生んでいた。

 しかし8月以降は4勝18敗1分けで、勝率はわずか・182と散々な成績。打線に抵抗力が全くなくなった。勝負強く打点を稼ぎ、出塁率も高かった新井の不在が響いたのは明らかだった。

 さらに追い打ちをかけたのが、五輪直後に判明した新井の腰椎(ようつい)疲労骨折。結局、復帰は甲子園で巨人を迎え撃った9月27日にまでずれこんだ。疲労骨折していた腰の状態は万全ではなかったが、岡田監督も「戻ったんではなく、戻したんや。もう待ってられん」と起爆剤効果を狙った。だが、勢いづいた巨人を跳ね返す力はもはや残っていなかった。

 投手陣も打線の援護がなく、力尽きる試合が多かった。〈表II〉で月ごとのイニング別の失点を集計した。8月で最も多く失点を喫したのが七回、そして9月が五回。藤川の不在で手薄になったリリーフ投手陣がまず打たれ、先発投手陣の崩壊につながった。9月の先発投手の勝敗は3勝11敗という数字が、それを物語っている。

 北京五輪に狂わされた歯車。ただ、この屈辱を晴らすチャンスはクライマックスシリーズ(CS)に残されている。短期決戦は2005年の日本シリーズから6連敗中と苦手な岡田阪神だが、ここは猛虎の意地を見せるしかないだろう。

【表I】

■今季、阪神の先制、非先制試合の成績

   【先制試合】  【先制された試合】

3、4月 11勝2敗1分  8勝5敗

  5月 8勝6敗    6勝4敗

  6月 9勝2敗    2勝4敗

  7月 8勝2敗    8勝7敗

  8月 7勝1敗    2勝10敗

  9月 9勝5敗    2勝6敗1分

  10月 1勝2敗1分  0勝2敗

   計 53勝20敗2分 計28勝38敗1分

【表II】

■今季、阪神の月、イニング別失点

   3.4 5 6 7 8 9 10

   月 月 月 月 月 月 月 計

1回 11 8 19 14 8 11 4 75

2回 7 4 8 9 1 13 0 42

3回 12 8 6 9 9 13 2 59

4回 6 7 9 3 8 16 1 50

5回 12 6 6 6 9 23 0 62

6回 9 19 13 19 12 12 6 90

7回 6 12 5 1 23 11 6 64

8回 6 10 8 10 9 0 3 46

9回 2 6 2 7 7 0 0 24

延長   1 1   1     3

 計 71 81 77 78 87 99 22 515


【2008/10/12 産経新聞】
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