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 【ニューヨーク3日(日本時間4日)】マリナーズのイチロー外野手(33)がヤンキース戦の三回、ロジャー・クレメンス投手(45)から6号ソロを放ち、1900年以降の近代野球ではウエード・ボッグス(レッドソックスなど)と並ぶ史上2人目、新人からでは史上初となる7年連続のシーズン200安打を達成した。7-1の快勝で連敗を9で止めたマ軍は、ワイルドカード(各地区2位の最高勝率)争いで首位のヤ軍に1ゲーム差とした。



 狙っていた。明らかにいつものイチローとは違っていた。一回に右前打を放ち、リーチをかけて臨んだ三回の第2打席。クレメンスの3球目をとらえると、打球は右中間スタンドで弾んだ。ヤンキースタジアムで、7年連続200安打の偉業を成し遂げた。

 「この(狭い)球場なら…。しばらく出てないホームランがここで出るのは何かある。ちょっと僕自身が『いい感じ』と思ってしまいました」

 こぼれそうになる笑みをこらえて、ダイヤモンドを一周した。ただの記録達成ではない。ワイルドカードを争うヤンキース相手、しかも敵地で、マウンドには米大リーグ通算354勝の剛腕クレメンス。6月5日(日本時間6月6日)のオリオールズ戦以来、約3カ月ぶりの一発となる勝ち越しの6号ソロで決めた。

 思えば前戦(現地時間2日、対ブルージェイズ)では2三振を含む4打数無安打。悪球を空振りするシーンもあった。その翌日に…。まるで“大舞台”での達成を狙っていたかのような変身。これが天才だ。

 積み重ねる記録だけに、たどり着くまでの過程を重視する。昨季は200安打を目前に“足踏み”が続いたが「そこを超えたいなあと、強く意識して超えた。超えたことの方が今回はうれしい」。苦しんだのは不必要な意識、邪念。一方で「少なくとも去年とは全く違う」と技術面での進歩も口にした。

 シーズン中は詳細に打撃を語らないが、昨年は180安打前後で「打ちたいという色気が強くなり過ぎた」という。じっくりボールを見ようとすることで右足の始動の遅れにつながった。今季はこの現象が見られず、7年間で3番目の早さとスムーズな200安打到達だった。

 「9連敗だったから雰囲気は最悪。でも、どんな状況でも個人の仕事はやらないと。今年は今までと違う状況だったが、そこで同じような数字を残すことは僕にとっての“マスト(必須)”だった」

 来季も200安打を達成すれば、1894年から1901年にウイリー・キーラー(スーパーバスなど)が記録した史上最多の8年連続に並ぶ。メジャーの頂点に近づきつつある男の一発で連敗を止め、ヤンキースとは1差接近。自らのメモリアルを自ら何重にもデコレーションして、今年もまた天才は節目の数字を超えた。


「ちょっと僕自身がいい感じ」7年連続200安打イチローに聞く


――200安打はクレメンスから

 「(全盛時とは)投げているボールが全然違うけどビッグネームだから…。いい記念になりますよ」

 ――本塁打での達成となったが

 「しばらく出ていないホームランがここで出るというのは何かある。ちょっと僕自身がいい感じだな、と思ってしまいました」

 ――打球がスタンドに入るまで何を思ったか

 「この球場なら、という感じですね。普通の球場なら“抜けてほしい”と思うところを“あっ、ここはニューヨークだった”と途中で思ってしまった」

 ――ボールがグラウンドに返ってきた

 「ありがとう、ありがとうと思いました。投げろ、投げろって。時々、違うボールを投げる奴がいるから、それがちょっと怖かった」

 ――公式戦が26試合残っていても、200安打はホッとするものか

 「それがあまりホッとしない。190本目にきたときは、すごくホッとしましたが…」

 ――7年連続200安打でボッグスと並んだ

 「名前しか知らない。(実際のプレーを)見ていないから、軽いことは言えないですね」

 ――自分を代表する数字は200か262(シーズン最多安打数、04年)か

 「車のナンバーは262ですけどね、200ではないですね。そもそも、262は僕しかやっていない。僕だけのものなんで」

 ――例年以上に過酷な日程でつらい時期もあったか

 「つらいことは人に話したくない。そういえば、つらいことがあったように思われるかもしれないが、実際にはなかったですね」

 ――プレーオフ争いの中で達成した意味は

 「9連敗だったから雰囲気は最悪。今年は今までと違う状況だったが、そこで同じような数字を残すことは僕にとっての“マスト(必須)”だった」

 ――故障の少なさが7年連続につながった

 「(多少の)けがはしていますよ。ただ、使う側にとってリスクのない選手ではいたいと思う」


★敵地の達成で場内放送もなし

 敵地での200安打達成とあって、ヤンキースタジアムはあっさりとしたもの。電光掲示板でのお知らせも、場内放送でのアナウンスもなかった。観客がほとんど記録を知らぬ中での快挙達成。しかし、記録の重みを力説したのは、ネット裏にいた公式記録員のビル・シャノン氏だ。1978年から記録員を務め、記録に関する著書もあるシャノン氏は「野球で最も重視されるのは継続性。それを飛び抜けた形で見せている。過去に達成した2人はいずれも殿堂入りしている。これがイチローにとって何を意味するか。そう。殿堂入りの価値があるということ」と話した。



★城島「途切れてほしくない」

 「7番」で先発した城島健司捕手(31)は4打数1安打。連敗ストップについて「あれ(二回無死一、二塁で中前に抜けそうなゴロをベタンコートが好捕)は大量失点につながりそうなパターンだったので大きかった」と振り返った。イチローの快挙には「今年は去年のような(途中での)苦しそうな感じが見えなかった。イチローさんの(メジャー)6年目から僕がマリナーズに来たが、一緒にプレーしている間に途切れてほしくないですね」とさらなる期待を寄せた。


★松井秀は脱帽「イチローさんには普通のこと」

 イチローの7年連続200安打達成の瞬間を、ヤンキースの松井秀喜外野手(33)は一塁ベンチから見ていた。「驚くことなんか何もありません。ある意味、イチローさんにとっては普通のことでしょう。それがイチローさんのすごさでもあるんです」。タイプは違うが、日本時代から何かと比較される1学年上の先輩に脱帽していた。


★松坂「ボクもいずれ高いレベルで成績残したい」

 イチローの快挙にレッドソックスの松坂大輔投手(26)も敬意を表した。「ボクもいずれ、高いレベルで毎年のように成績を残せる選手になりたいですね」。“投手部門”でイチローに匹敵するような名選手になることが目標と口にした。ただ、この日は7失点していたこともあり、控えめな祝福コメントとなった。


◆ソフトバンク・王監督
「7年連続ってのはすごいのひと言。それだけで1400本だもんな。8年連続の人がいるなら、あと2年打って単独の記録を打ち立ててほしい」


◆マリナーズのチャック・アームストロング球団社長
「私が野球にかかわった22年間でイチローほど厳しく自分をコントロールする選手はいなかった。米国外からの選手が比較的多いわれわれのチームでは、特に行動と結果で引っ張るイチローのような存在が必要だ」


◆フィリーズ・井口
「1、2番(打者)としては打ってみたい数字。毎年、やり続けているのはすごい」


◆オリックス時代の同僚のカージナルス・田口
「誰も知らない世界だから、簡単にコメントできないけど…。彼にしか分からない苦労があると思うが、まず体と心ありきだと思う。それを完ぺきに維持していることが、安打の数に出てくるんでしょう」


◆ヤクルト・青木
「続けて打つこと、狙って打つことがすごいですよね

【2007/9/5 サンスポ.COM】
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