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岩村、松井稼、井口、持ち味を発揮する3人の二塁手

日本人二塁手の活躍が目覚しい

 2008シーズンは予想外の展開が続いている。象徴的なのが、オフの大型補強でワールドシリーズ優勝の呼び声も高かったタイガースの大不振。開幕ダッシュどころか、いきなりの7連敗。いまだに上昇の気配が見えず、最下位に低迷したままだ。

 そんなフタを開けてみなければ分からない状態の中で、快進撃しているのが1998年に球団創設以来、最下位を免れたのが1回だけというメジャーの“お荷物球団”レイズと、お世辞にも前評判が高いとは言えなかったアストロズである。

 5月の月間成績は15日(現地時間)まで、レイズが9勝5敗、アストロズにいたっては何と11勝2敗だ。両リーグで最もレッド・ホット(絶好調)なチームは、当然ながら順位も上昇。レイズは球団史上初の貯金7で首位に立ち、アストロズはカージナルスをかわして2位に浮上している。

 そして、この両チームの躍進に大きく貢献しているのが2人の日本人二塁手、岩村明憲と松井稼頭央なのである。

首位レイズの快進撃を支えている岩村

 レイズの勢いは、岩村の打撃の調子とともに加速してきた。開幕以来、バットは湿りがちだった。本人は公言することはないが、三塁から二塁へのコンバートが肉体的にも精神的にも負担になっていたことは間違いない。

「打つより、まず守ること」
 ジョー・マドン監督から与えられた優先順位。球団が超大型新人エバン・ロンゴリアを起用する方針を固めていたために、コンバートはオフから決められていた。だから、スプリングトレーニングには使い慣れた三塁手用のグラブを持参しなかった。そこに、彼の覚悟と、いさぎよさが見える。
 「打席でのタイミングとリズムが出てきた」(マドン監督)という岩村のバットは、5月に入って火を噴く。13日まで5試合連続のマルチを含む、11試合連続安打をマーク。そして、連続安打が途切れた翌15日の対ヤンキース戦の初回では、前日の惜敗のうっぷんを晴らすとともに試合の流れを再び戻す先頭打者本塁打を放ち、勝利の殊勲者になった。

 しかし、マドン監督が高く評価するのは、依然として無失策を続けている守備だ。
「彼には素晴らしい俊敏性がある。併殺プレーもグレートだ。これで、打撃の方では2割7分5厘、出塁率3割5分をマークしてくれたら言うことはないよ」

アストロズを引っ張っている松井稼

 岩村と同様に大活躍しているのが、今シーズンからアストロズにFA(フリーエージェント)移籍した松井稼だ。臀(でん)部の手術で出遅れたが、4月18日に遅い開幕を迎えた後は、主に2番打者としてチャンスメーカー、あるいはつなぎ役として存在感を見せている。

「攻・守はもちろん、すごいのは走塁。彼はチームにエネルギーを注入してくれている」
 セシル・クーパー監督は絶賛する。実際、すでに8盗塁(現地時間5月16日現在)を決めているのだが、確かにクーパー監督が語るように松井稼が4月19日にスタメンに名を連ねてから、それまで6勝11敗だったチーム成績はその後18勝7敗と一気に上昇気流に乗っているのだ。その原動力は三冠王さえ狙えそうな爆発力を発揮しているランス・バークマンを中心にした、ミゲル・テハダ、カルロス・リーという重量トリオと言えるかもしれないが、彼らの活躍を促す活性剤的な役割を果たしている松井稼の働きを見逃すことはできない。

井口も走攻守に持ち味を発揮

 もう一人の日本人二塁手、パドレスの井口資仁も持ち味を発揮している。スランプを脱し、打率を2割5分3厘までアップし、盗塁もチーム総数の半分以上にあたる6個を決めている。しかも、岩村と同様に今シーズンはここまで無失策。
 しかし、残念ながら、井口の活躍はチーム成績には反映されていない。エイドリアン・ゴンザレス以外の打者が不振である上に、売り物であるはずのブルペンが不調で、予想外の最下位に甘んじているのだ。
 だが、明暗を分けてはいるが、日本人二塁手が存在感を増していることは確かなことだ。
「一般的に、日本人選手は敏しょう性に優れている。しかも、高校時代から基本的なプレー、細かいプレーをたたき込まれているから二塁手には向いている」と語るのは、現役時代に名二塁手として鳴らし、ことしからロイヤルズの特別コーチ兼スカウティング・アドバイザーに就任した白井一幸氏(元北海道日本ハム・ヘッドコーチ)。
 となれば、メジャーリーグに日本人二塁手ブームが到来するかもしれない。
 
<了>

■出村義和/Yoshikazu Demura

スポーツジャーナリスト。現在、メジャーリーガー30人のチャレンジ・スピリットを綴った書き下ろしノンフィクション短編集『メジャーリーガーズ』(小学館文庫)を好評発売中。メジャー本といえば、これまでガイド的なものや、人物やシステムの紹介といったものに限定されていたが、この本はこれまでにはなかったアプローチでメジャーリーガーに迫り、彼らの生き方まで引き出している興味深い一冊

【2008/5/16 スポーツナビ】
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