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【7月1日】1994年(平6) 

 【近鉄8―3西武】ひどいと言うべきか、それともすごいと言うべきか、とにかく前代未聞の勝利投手だった。

 西武12回戦(西武)に先発した、近鉄・野茂英雄投手はなんと毎回の16四球を与えながら、5安打8奪三振の3失点で完投勝ち。シーズン7勝目を挙げた。「打線が打ってくれたから勝てた。感謝のひと言です。とにかく途中で(マウンドを)下りるわけにはいかなかった。16四球?うーん……」。191球を投げきった後だけに、口を開くのも面倒な様子。16四球の感想を聞かれると、決して褒められる内容ではないだけに口ごもってしまった。

 あきれながらも最後まで投げさせた鈴木啓示監督は「9回に3点取って5点差になったから代えなかった。16個四球出すなんてありえないけど、これが野茂なんかなぁ。とにかく他の投手にはマネできんてことや」と通算317勝投手も理解できないといったのが本音のようで、言葉を無選びながら対応。同じ投手として言いたいことはたくさんあったが、一時最大15もあった借金が半分近い8に減ったことで、指揮官はなんとか自分を納得させていた。

 1試合16四球は、野茂自身が持つ92年7月10日の西武12回戦(西武)の14四球を更新する日本新記録。この時は完投しなかったが、プロ野球史上最多与四球完投勝利の記録は、戦後間もなくの46年(昭21)4月29日、セネタースの一言多十(ひとこと・たじゅう)投手が、中部日本1回戦(後楽園)で13四球を許しながら、7安打1失点に抑えたという例があったが、それを3つも上回る記録を48年ぶりに塗り替えた。
 191球中、半分以上の105球がボールの判定。西武の打者がボール球に手を出したケースも少なくなかった。これだけ走者が塁上をにぎわせながら、15残塁で3点しか取れず、シーズン初の3連敗に森監督はおかんむり。「アホらしくて何も話す気がせんよな。せつかく初回に2点取ったのに、あのゲッツーで野茂を助けてしまったな」と1回に1死満塁で7番田辺徳雄遊撃手が打った遊ゴロ併殺打を敗因と指摘した。

 「16個も四球もらって負けたチームなんて聞いたことない。いわば16安打して負けたようなもんや。3連敗?これから深みにはまっていきそうだな。ドロ沼だよ」と自虐的に笑った森監督。予想通り、月初めの試合で前代未聞の黒星に、7月は調子が上がらず、9勝13敗と負け越し。首位はキープしたものの、オリックスとダイエーに1ゲーム差まで詰め寄られた。

 結局、地力に勝る西武がリーグ5連覇を達成したが、恥すべき敗戦がチーム状態を一時狂わせたのは間違いなかった。

【2011/7/1 スポニチ】
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