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 北京五輪日本代表・星野仙一監督(61)特有の「情念」の采配は、リスクが高い。場合によっては大きな波紋を広げかねない。1度ほれ込んだ男には最後までこだわる。大不振の巨人・上原浩治投手、腰痛が悪化した阪神・新井貴浩内野手に対し、ギリギリまで待つ姿勢を示したのは象徴的だ。そんな“星野の流儀”が、北京で吉と出るか凶と出るか…。

 きょう17日、日本代表最終メンバー24人が発表される。星野監督にとっては、想像を絶する苦渋の決断となった。前日の16日夜、札幌ドームで上原が中日戦の8回2死一、二塁のピンチに登板し、メッタ打ち。1死も取れないまま降板した。6月29日にリリーフ投手として1軍復帰して以降、一向に復調の兆しが見えなかったが、この日は最もひどかった。はっきり言って、いつ2軍での再調整を命じられてもおかしくない内容だ。

 ところが、上原が打たれる4時間前、星野監督は都内で報道陣を前に「俺の言葉は崩れていない」と上原の当確を示唆していたのだ。

 星野監督の脳裏には、昨年12月のアジア予選で上原が演じた快投がある。五輪出場決定の分水嶺となった韓国戦。上原は1点差の9回に抑えとして登板し、3人でピシャリ。星野監督は「あの重圧の中であのピッチングができるのか。同じ投手出身者として信じられない。以前からいい投手とは思っていたが、一緒にやってみて、物すごいやつだとわかった」と興奮気味に繰り返してきた。

 同じ16日にヤクルト戦を欠場し、足かけ4年の連続試合出場が473でストップした阪神・新井に対してもしかり。アジア予選の全3試合で4番の重責を託し、実際に2ラン1発を含む12打数6安打(打率5割)5打点の結果を出している。「ジャパンの4番なのだから、新井のための五輪ともいえる」とまで。

 そもそも、星野ジャパンの内閣には、大学時代からの親友である田淵ヘッド兼打撃コーチと山本守備走塁コーチを起用した。とりわけ山本コーチは、監督経験はあってもコーチ経験は皆無。現役時代536本塁打を誇った打撃担当ならともかく、守備走塁のスペシャリストとは言い難い。そこは星野監督自身「浩二(山本コーチ)の所は正直言って迷った。しかし、大学時代から『いつか同じユニホームを着て戦おう』と約束していた。それをかなえられるのは今しかない。あ・うんの呼吸がここ一番で強みになることもあるだろう」と理論的な配置ではなかったことを認めている。

 となると、気が気でないのは、中日・落合監督だ。星野監督はアジア予選で、中日からロッテと並ぶ球団別最多の5人を選出。「全員、俺が中日監督時代に入団発表をやった子たち」という思い入れと使いやすさがあったからだ。実際に韓国戦では、川上に4回からロングリリーフを命じ、中日ではほぼ1イニング限定の岩瀬に22/3回も投げさせ、足を故障してまともに走れない井端を代打で起用した。中日勢はそろって無理を強いられ、選手たちもよく応えていた。

 五輪本戦でも、川上は先発と中継ぎの両刀遣いが検討されており、岩瀬も大車輪の働きが期待されている。ただでさえ交流戦後に大失速し、2位の座から転落した落合中日だけに、星野ジャパンに主力をごっそり抜かれた上、ボロボロになって帰ってくる可能性があるときては、たまらないだろう。

 評論家の間には、「どうしてそこまで特定の選手にこだわるのかワケがわからない。もっと冷静に現在の力量、状態をみて選考すべきだ。大向こうをうならせるためだけの安っぽいストーリーに乗っかってどうする」との声も。北京での結果次第で非難の火の手が上がるかもしれない。

 もちろん体育会系の男たちの集団のこと。義理人情を背景にした絆が、重圧のかかる五輪で力になる可能性もある。星野監督は、「野球はストーリー性も重要や」とも話す。果たして金メダルを獲得し、「美談」でまとめ上げることができるかどうか。

【2008/7/17 ZAKZAK】
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