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大嶽親方はなんと昇格
これでは、トカゲの尻尾切り。身内ばかりか、自分自身にも甘い、というそしりを受けても致し方ない。注目された大麻取締法違反で逮捕された十両・若麒麟(25)=本名・鈴川真一=の処分。日本相撲協会は2日の理事会で若麒麟の解雇と師匠の尾車親方(元大関琴風)の委員から平年寄への2階級降格を決めた。再発防止検討委員会では力士だけでなく親方、行司、呼び出し、床山など全協会員を対象に抜き打ちの尿検査を実施することも決めた。
解雇者は、この1年あまりで8人目。処分の多さにも驚くが、もっと驚くのが処分の甘さだ。解雇処分の場合、規定で養老金(退職金)を請求されると拒否できず、昨年8月に大麻使用で解雇された若ノ鵬にも580万円余が支払われている。ただ、今回は一丸となって再発防止に取り組んでいる最中で、「若ノ鵬らとは状況が違う」という声が強く、この日の理事会でも退職金支払い義務のない1ランク上の「除名」を求める意見が半数を占めた。しかし、最終的には前例に合わせる形で解雇処分に。
「まだ25歳と若い。第2の人生を考えると、除名にするのはかわいそうだということになった」と武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は説明した。若麒麟の養老金は529万円になる。
この返す刀で、なんと自分たちの監督責任もバッサリと切り捨て、減俸もけん責もなし。合わせて、若ノ鵬や露鵬の解雇処分のときに2階級降格処分を食らった師匠の間垣親方(元横綱2代目若乃花)と大嶽親方(元関脇貴闘力)らも1階級昇格させる決定までやってのけた。
「2日前、この責任をどう取るか考えないと、と話していたが」と報道陣から問われ、武蔵川理事長は「今後、再発防止に努める、それが私の責任」とうろたえながら答えた。
身内に甘い、という大相撲界の伝統はいまだ健在。さらに、不思議なのは事件発生から処分まであまりにも早いことだ。若ノ鵬の処分は3日目だった。露鵬、白露山のときは6日目、今回も事件発覚からわずか3日目だ。
いくら近代相撲はスピードと切れがポイントとはいえ、こんなに早くてはどうしてこういうことが相次いで起こるのか、事件の背景に何があるのか、何もわからない。
具体的な再発防止策について、武蔵川理事長は「再発防止検討委員会の活用と、(大麻やドーピングの)検査を数多くやっていく」と個性のない答えしか、口にできなかったのもある意味で当然といえる。
次回から「生活指導部特別委員会」と名前を変える再発防止検討委員会のやくみつる委員(漫画家)は「自分たちの意見が理事会にどこまで反映されているのか」と疑問を呈し、理事会の甘い裁定に強く反発した。当然の反応だ。大相撲界の夜明けは遠い。
【大相撲・最近の不祥事と処分】
年・月 対象者 処分内容
平18・7大嶽親方 露鵬の暴行で3カ月10%減俸
露 鵬 名古屋場所3日間の出場停止
19・5大島親方 旭天鵬の人身事故で3カ月30%減俸
旭 天 鵬 夏場所出場停止、3カ月30%減俸
8高砂親方 朝青龍のサッカー問題で4カ月30%減俸
朝 青 龍 2場所出場停止、4カ月30%減俸
10時津風親方 力士暴行死事件で解雇
北の湖理事長 力士暴行死事件で4カ月50%減俸
や理事など 力士暴行死事件で3カ月30%減俸
20・3時津風部屋 力士暴行死事件で春場所出場停止
の2力士
5朝 青 龍 勝負後に土俵でにらみ合い厳重注意
白 鵬 勝負後に土俵でにらみ合い厳重注意
間垣親方 弟子を竹刀で殴打、3カ月30%減俸
陸奥親方 豊桜が弟弟子をたたき、けん責
豊 桜 3カ月30%減俸
8若 ノ 鵬 大麻所持容疑で逮捕、解雇
間垣親方 若ノ鵬の大麻事件で理事辞任
9露 鵬 尿検査で大麻に陽性反応、解雇
白 露 山 尿検査で大麻に陽性反応、解雇
北の湖理事長 白露山の大麻問題で理事長辞任
大嶽親方 露鵬の大麻問題で委員から年寄に降格
21・1明 義 豊 力士暴行死事件で有罪確定、解雇
怒 濤 力士暴行死事件で有罪確定、解雇
時 王 丸 力士暴行死事件で有罪確定、解雇
若 麒 麟 大麻所持容疑で逮捕、解雇
【2009/2/3 ZAKZAK】
【體育】「かわいそう」で解雇 甘すぎる相撲協会
日本相撲協会は2日、東京・両国国技館で理事会を開き、大麻所持で神奈川県警に現行犯逮捕された十両若麒麟容疑者(25=本名・鈴川真一、尾車)を解雇処分、師匠の尾車親方(元大関琴風)を委員から平年寄へ2階級降格にした。より重い除名処分を求める声も上がったが、「かわいそう」の声が強く解雇となり、退職金529万円も支払われることになる。昨年8、9月の大麻問題で降格された2人の親方の再昇格も明らかになり、身内に甘い協会の体質が露呈した。
「鬼の武蔵川」が、仏の甘い判断を下した。「若麒麟は解雇。退職金も支払うことになると思います」。理由は、元若麒麟容疑者への情状だった。
武蔵川理事長 本人も25歳と若く、第2の人生のことも含めて考えれば、除名まではちょっとかわいそうじゃないかという意見も出まして、解雇ということになりました。
理事会では「除名」と「解雇」という意見が、真っ二つに割れたという。「再発防止に取り組んでいる中、確信犯的な若麒麟の行為は許せない」と除名を訴える理事がいる一方で、外部監事の吉野準監事(元警視総監)が「除名は相当なことがなければという内容。同じクビでも、江戸時代で言えば打ち首獄門に相当する。特別なことなので、伝家の宝刀を軽々に抜くべきではない」と訴えたという。それでも、退職金を支払う解雇に違和感を訴える役員は除名を主張。同監事が「退職金を払わないから除名するというのは、本末転倒。規則に不備があること」と訴え、武蔵川理事長も賛同。過去の大麻問題で3人のロシア出身力士を解雇した前例にならった。
役員の責任は不問とされた。事件発生当日の会見では「責任の取り方を考える」と言ったが、この日は「今後、2度とないように再発防止に努めていく」と繰り返すだけ。昨年秋場所前の就任時に「第一のテーマは再発防止。全力士に厳しくしていく」と宣言したが、それを守れなくても自らにペナルティーを科さなかった。当事者本人と師匠の尾車親方だけが処分された。
さらに協会はこの日、昨年の大麻問題で2階級降格になった2親方の1階級昇格を決めた。昨年8月に弟子の若ノ鵬(解雇)が大麻所持で逮捕されたことに伴い、理事から委員に降格した間垣親方(元横綱若乃花)は、役員待遇に。同9月に弟子の露鵬の大麻使用が明らかになり、委員から平年寄に降格した大嶽親方(元関脇貴闘力)は、主任となった。武蔵川理事長は「本人たちも反省しており、社会的制裁も受けた。間垣は元理事、大嶽は元委員という協会への功績も込めて1階級上げた」とのコメントを文書で発表した。
重なった「甘い判断」に、協会内でも「世間は納得しないだろう」の声が漏れた。ある関係者は「若麒麟に退職金を支払うというのは、今後、余計なことは話すなという口止めの意味もあるのではないか」と指摘する。世の常識とずれた身内への甘さでも、角界は再び窮地に陥った。
【2009/2/3 Nikkansports】
これでは、トカゲの尻尾切り。身内ばかりか、自分自身にも甘い、というそしりを受けても致し方ない。注目された大麻取締法違反で逮捕された十両・若麒麟(25)=本名・鈴川真一=の処分。日本相撲協会は2日の理事会で若麒麟の解雇と師匠の尾車親方(元大関琴風)の委員から平年寄への2階級降格を決めた。再発防止検討委員会では力士だけでなく親方、行司、呼び出し、床山など全協会員を対象に抜き打ちの尿検査を実施することも決めた。
解雇者は、この1年あまりで8人目。処分の多さにも驚くが、もっと驚くのが処分の甘さだ。解雇処分の場合、規定で養老金(退職金)を請求されると拒否できず、昨年8月に大麻使用で解雇された若ノ鵬にも580万円余が支払われている。ただ、今回は一丸となって再発防止に取り組んでいる最中で、「若ノ鵬らとは状況が違う」という声が強く、この日の理事会でも退職金支払い義務のない1ランク上の「除名」を求める意見が半数を占めた。しかし、最終的には前例に合わせる形で解雇処分に。
「まだ25歳と若い。第2の人生を考えると、除名にするのはかわいそうだということになった」と武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は説明した。若麒麟の養老金は529万円になる。
この返す刀で、なんと自分たちの監督責任もバッサリと切り捨て、減俸もけん責もなし。合わせて、若ノ鵬や露鵬の解雇処分のときに2階級降格処分を食らった師匠の間垣親方(元横綱2代目若乃花)と大嶽親方(元関脇貴闘力)らも1階級昇格させる決定までやってのけた。
「2日前、この責任をどう取るか考えないと、と話していたが」と報道陣から問われ、武蔵川理事長は「今後、再発防止に努める、それが私の責任」とうろたえながら答えた。
身内に甘い、という大相撲界の伝統はいまだ健在。さらに、不思議なのは事件発生から処分まであまりにも早いことだ。若ノ鵬の処分は3日目だった。露鵬、白露山のときは6日目、今回も事件発覚からわずか3日目だ。
いくら近代相撲はスピードと切れがポイントとはいえ、こんなに早くてはどうしてこういうことが相次いで起こるのか、事件の背景に何があるのか、何もわからない。
具体的な再発防止策について、武蔵川理事長は「再発防止検討委員会の活用と、(大麻やドーピングの)検査を数多くやっていく」と個性のない答えしか、口にできなかったのもある意味で当然といえる。
次回から「生活指導部特別委員会」と名前を変える再発防止検討委員会のやくみつる委員(漫画家)は「自分たちの意見が理事会にどこまで反映されているのか」と疑問を呈し、理事会の甘い裁定に強く反発した。当然の反応だ。大相撲界の夜明けは遠い。
【大相撲・最近の不祥事と処分】
年・月 対象者 処分内容
平18・7大嶽親方 露鵬の暴行で3カ月10%減俸
露 鵬 名古屋場所3日間の出場停止
19・5大島親方 旭天鵬の人身事故で3カ月30%減俸
旭 天 鵬 夏場所出場停止、3カ月30%減俸
8高砂親方 朝青龍のサッカー問題で4カ月30%減俸
朝 青 龍 2場所出場停止、4カ月30%減俸
10時津風親方 力士暴行死事件で解雇
北の湖理事長 力士暴行死事件で4カ月50%減俸
や理事など 力士暴行死事件で3カ月30%減俸
20・3時津風部屋 力士暴行死事件で春場所出場停止
の2力士
5朝 青 龍 勝負後に土俵でにらみ合い厳重注意
白 鵬 勝負後に土俵でにらみ合い厳重注意
間垣親方 弟子を竹刀で殴打、3カ月30%減俸
陸奥親方 豊桜が弟弟子をたたき、けん責
豊 桜 3カ月30%減俸
8若 ノ 鵬 大麻所持容疑で逮捕、解雇
間垣親方 若ノ鵬の大麻事件で理事辞任
9露 鵬 尿検査で大麻に陽性反応、解雇
白 露 山 尿検査で大麻に陽性反応、解雇
北の湖理事長 白露山の大麻問題で理事長辞任
大嶽親方 露鵬の大麻問題で委員から年寄に降格
21・1明 義 豊 力士暴行死事件で有罪確定、解雇
怒 濤 力士暴行死事件で有罪確定、解雇
時 王 丸 力士暴行死事件で有罪確定、解雇
若 麒 麟 大麻所持容疑で逮捕、解雇
【2009/2/3 ZAKZAK】
【體育】「かわいそう」で解雇 甘すぎる相撲協会
日本相撲協会は2日、東京・両国国技館で理事会を開き、大麻所持で神奈川県警に現行犯逮捕された十両若麒麟容疑者(25=本名・鈴川真一、尾車)を解雇処分、師匠の尾車親方(元大関琴風)を委員から平年寄へ2階級降格にした。より重い除名処分を求める声も上がったが、「かわいそう」の声が強く解雇となり、退職金529万円も支払われることになる。昨年8、9月の大麻問題で降格された2人の親方の再昇格も明らかになり、身内に甘い協会の体質が露呈した。
「鬼の武蔵川」が、仏の甘い判断を下した。「若麒麟は解雇。退職金も支払うことになると思います」。理由は、元若麒麟容疑者への情状だった。
武蔵川理事長 本人も25歳と若く、第2の人生のことも含めて考えれば、除名まではちょっとかわいそうじゃないかという意見も出まして、解雇ということになりました。
理事会では「除名」と「解雇」という意見が、真っ二つに割れたという。「再発防止に取り組んでいる中、確信犯的な若麒麟の行為は許せない」と除名を訴える理事がいる一方で、外部監事の吉野準監事(元警視総監)が「除名は相当なことがなければという内容。同じクビでも、江戸時代で言えば打ち首獄門に相当する。特別なことなので、伝家の宝刀を軽々に抜くべきではない」と訴えたという。それでも、退職金を支払う解雇に違和感を訴える役員は除名を主張。同監事が「退職金を払わないから除名するというのは、本末転倒。規則に不備があること」と訴え、武蔵川理事長も賛同。過去の大麻問題で3人のロシア出身力士を解雇した前例にならった。
役員の責任は不問とされた。事件発生当日の会見では「責任の取り方を考える」と言ったが、この日は「今後、2度とないように再発防止に努めていく」と繰り返すだけ。昨年秋場所前の就任時に「第一のテーマは再発防止。全力士に厳しくしていく」と宣言したが、それを守れなくても自らにペナルティーを科さなかった。当事者本人と師匠の尾車親方だけが処分された。
さらに協会はこの日、昨年の大麻問題で2階級降格になった2親方の1階級昇格を決めた。昨年8月に弟子の若ノ鵬(解雇)が大麻所持で逮捕されたことに伴い、理事から委員に降格した間垣親方(元横綱若乃花)は、役員待遇に。同9月に弟子の露鵬の大麻使用が明らかになり、委員から平年寄に降格した大嶽親方(元関脇貴闘力)は、主任となった。武蔵川理事長は「本人たちも反省しており、社会的制裁も受けた。間垣は元理事、大嶽は元委員という協会への功績も込めて1階級上げた」とのコメントを文書で発表した。
重なった「甘い判断」に、協会内でも「世間は納得しないだろう」の声が漏れた。ある関係者は「若麒麟に退職金を支払うというのは、今後、余計なことは話すなという口止めの意味もあるのではないか」と指摘する。世の常識とずれた身内への甘さでも、角界は再び窮地に陥った。
【2009/2/3 Nikkansports】
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