(16日高校野球、関東一1―0中京大中京)

 ファウル、ファウル、またファウル。鋭い直球にも、タイミングを外すチェンジアップにも、必死に食らいついた。

 そのうち「楽しくなってきた」。七回裏2死一、三塁の先制機、打席で粘る関東一(東東京)の鈴木大智君(3年)は、マウンドに立つ元チームメートへ思わずニヤリと笑みを見せた。

 目が合った中京大中京(愛知)のエース上野翔太郎君(3年)も笑っていた。すでに11球を投じていた。「予想以上に球が速くなっている。強気で来ているな」。懐かしさを感じながら気合を入れ直し、鋭い視線で投球を待つ鈴木君に、上野君は「絶対に抑えてやる」。力いっぱい投じた12球目は、140キロの内角高めのストレート。空振り三振だった。

 ともに愛知県出身。小学6年の時、東海地方の選抜野球チームで一緒になった。上野君から話しかけ、すぐに仲良くなった。中学時代は硬式野球チーム「愛知西シニア」で一緒にプレーし、上野投手と鈴木捕手で3年間、バッテリーを組んだ。

 「翔太郎は直球のコントロールとキレがいい。負けん気が強く度胸がある」と鈴木君。上野君は「キャッチングがうまく信頼していた。大智の指示通りに投げるだけだった」。互いを名前で呼び合い、信頼し合う2人は、チームの中心として全国大会にも出場した。

 「一緒に中京大中京に行かないか」。高校進学時、上野君に誘われた鈴木君だったが、「県外の強豪で甲子園を目指してみたい」と関東一を選んだ。「じゃあ甲子園で戦おう」。その約束が実現したのが、この日の試合だった。

 二回裏の初対決は変化球で左飛。五回は上野君が全5球とも直球で勝負し、鈴木君は一度もバットを振らずに三振に倒れた。

 3度目が七回裏だった。先制点を取るか、初失点を防ぐか。2人にとっても両チームにとっても重要な局面で、2打席連続の三振に打ち取った上野君は、ガッツポーズしながら大声を上げた。苦笑いした鈴木君は「自分が見た中で一番いい直球だった。今までで一番気持ちいい三振だった」。

 試合はサヨナラ本塁打で関東一が勝った。試合後の整列で2人は「ナイスピッチング」「ありがとう。がんばれよ」と短く言葉を交わした。甲子園での対決を果たした上野君の次の夢は「成長した姿で再びバッテリーを組みたい」。鈴木君の目標はまず「翔太郎のためにも日本一になる」。(関謙次)

2015/8/16 Asahi.com


中学時代、息の合ったバッテリーがライバルに…3回戦で激突した2人の結末は?

 第97回全国高校野球選手権大会第11日の16日。数々の熱戦が繰り広げられてきた聖地に、まるでドラマのような不思議な巡り合わせがあった。

 この日の3回戦で中京大中京と関東第一が激突。息詰まる接戦となったが、関東第一の鈴木大智捕手(3年)は、相手の上野翔太郎投手(同)との対決を心待ちにしていた。

 両チーム無得点で迎えた七回裏、2死一、三塁。打席で構える鈴木。相手は中学時代に愛知西リトルシニアでバッテリーを組んでいた上野だった。

 上野は「意識しないと言ったら嘘になるが、意識しないように全力でいった」。チェンジアップと140キロの直球を織り交ぜながら攻める。

 対する鈴木は「自分が捕っていた球よりもはるかに速くなっていた」と驚きながらも食らいつき、4連続のファウルで観客を沸かせた。

 勝負に決着がついたのは粘って12球目、140キロで入った上野の直球をフルスイングしたが、空振り三振に倒れた。

 しかし、チームメートの長嶋が九回、値千金のサヨナラ本塁打で幕は閉じた。

 試合後に上野のもとに駆け寄り、「ナイスピッチング」と声をかけたが、上野は泣き崩れていた。鈴木は「悔しいが、今までの三振で一番気持ちよかった。納得できた」と振り返った。また「あいつが泣いている姿を見て心が苦しくなった」と本音を口にしたが、「あいつの分まで勝ってくる」と次戦での健闘を誓った。

 2人の出会いは小学6年のとき。中学3年間、ともに白球を追いかけたが、鈴木は中学卒業後、「実力を試したい」と県外の高校への進学を決意し、愛知県蟹江町を離れて関東第一に入学。上野は地元の強豪、中京大中京に進学した。

 「甲子園で会おう」

 バッテリーとして苦難を乗り越えてきた2人は離ればなれになるとき、全国の高校球児の夢の舞台で再会することを約束した。

 甲子園の切符を手にするだけでも大変なことだが、両チームが勝ち抜き、さらに抽選を経て、対戦が実現する-。3年の時を経て互いに交わした言葉が、新たなドラマを生み出した。

 この日の試合には、愛知西の半田安利監督(58)も、同チームの選手65人を連れて観戦に訪れた。選手は一塁側と三塁側に半分ずつに別れて2人を応援。監督は「平等に応援したい」とバックネット裏の席に座った。

 甲子園の出場が決定した直後、2人はそれぞれ愛知西リトルシニアで指導を受けた恩師、半田安利監督(58)に電話をかけた。伝えた言葉は2人そろって「優勝します」だったという。

 半田監督は「今日の試合では勝敗は関係ない。2人とも立派になった」と聖地で躍動する教え子に目を細めていた。(三宅真太郎)


産経ニュース

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