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 ダークスーツにピンクのネクタイ、胸には同色のチーフ。次期監督は、さわやかに報道陣の前に現れた。真弓明信氏だ。だが、笑みは長続きはしなかった。坂井信也オーナーは就任要請の直後、「今の阪神は強くなった。それなりの結果を出してもらいたい」とくぎを刺した。真弓氏も「これからは結果が求められると思う」と重責をかみしめた。

 岡田前監督の後任選びで、坂井オーナーが基準としたのが、現在の路線を確実に継承し、主力選手の高齢化や若手の伸び悩みなど、今後の課題についても指導力を発揮できる人物だった。

 坂井オーナーは「球団OBの中では、真弓さんの存在が頭にあった」と明かす。球団にかかわるようになった23年前、「試合後の宿舎でいつもバットを振っていたのが真弓さん」。そんな姿が頭にこびりついていた。

 真弓氏には、現役時代の実績にも華がある。それを端的に示すのが、先頭打者本塁打通算41の数字。福本豊氏(元阪急)の43本に次ぐ歴代2位だ。

 真弓氏本人は当時、「ベンチの明るさを一気に引き出そうと思って打席に入っている」とチーム本位の信条を語っている。オールラウンダーとして、遊撃手(78年)、二塁手(83年)、外野手(85年)とそれぞれ違うポジションでベストナインに選ばれたり、代打に回った94年に年間30打点の日本記録を達成したり。与えられた持ち場で全力を尽くす姿勢と経験は、やがて00年から5年間勤めた近鉄のコーチ時代に昇華する。北川、礒部らの力を伸ばし、中村紀、ローズらを生かした。自らが体現した「適材適所」を、指導者としても実行した。

 真弓氏は、指導方針をこう語る。「選手を先入観で見ず、じっくり自分の目でいいところを引き出したい」。そんな新指揮官について、坂井オーナーは23日、「本当に信念を持っている人。いろいろ経験を積んで、バランスが取れている」と評し、熱い視線を送った。

 ◇  ◇  ◇
 阪神第31代監督への就任が決まった真弓氏の素顔に迫った。

【2008/10/24 毎日新聞】
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