close
【5月2日】2003年(平15) 

 【近鉄11-10日本ハム】試合時間4時間9分。両軍合わせて9本のアーチが大阪ドーム内を飛び交った。近鉄にいたっては全得点が本塁打によるもの。しかも、あらゆるタイプのアーチが飛び出し、さながらホームランのフルコースのようだった。

 まずは1番大村直之中堅手。初回、1点を先制されたが、日本ハムの先発金村暁投手から同点となる右越えの先頭打者本塁打。「次につなぐという意識でバットを振っただけ」と冷静な切り込み隊長。自身10度目となる初回先頭弾はチームを勢いづかせる一発になる予感がした。

 しかし、近鉄先発の岩隈久志投手がこの同点弾でもノレず、5回まで7失点。6点差がつき、4連敗の可能性が濃厚になってきた。

 ゴールデンウイークどころか、悪夢の黒星街道まっしぐらとなりそうなところを救ったのはまた大村だった。5回2死満塁から再度金村を打ち砕く、通算4本目のシーズン4号グランドスラム。2点差に詰め寄った。初回先頭打者弾と満塁ホーマーはプロ野球史上15年ぶり5人目の記録となった。

 8回2点差。追い込まれたチームを救ったのが、代打の益田大介外野手。走者2人を置いて、4人目の芝草宇宙投手から左翼席へ値千金の逆転3点本塁打を放った。

 これで勝負がついた、とはいかなかった。9回、2死カウント2-3から近鉄抑えの岡本晃投手から西浦克拓右翼手が同点弾を打つと、続くDH坪井智哉外野手がこの日2本目の2号ソロ右翼席に運び逆転。シーソーゲームは9回裏を迎えた。

 逆に追い詰められた近鉄だが、簡単に2死。打席に3番タフィ・ローズ左翼手が入った。1発食えばまた振り出し。そう思うと、日本ハムの伊達昌司投手はボールが思ったところにいかなかった。カウント0-3。打ってこないだろうと、投げた不用意な真ん中ストレートは、簡単に右中間スタンドへ運ばれた。 土壇場での同点ホームラン。ガックリひざをつく伊達とは対照的に、大はしゃぎの近鉄ベンチ。10-10の同点に大阪ドームの近鉄ファンもヒートアップ。延長戦に突入すると、流れは近鉄に傾いた。

 11回再びローズに打順が回った。日本ハム6人目の山口弘佑投手は、球場の雰囲気に飲まれ、ローズの発するオーラにも怖さを感じていた。直球が吸い込まれるように真ん中に入った。迷わず振り抜くと、打った瞬間それと分かる右中間スタンド上段へのサヨナラ11号本塁打!。両軍計27安打のノーガードの殴り合いのような試合は、いてまえ打線の本領発揮で終わった。「月が替わってツキも変わった」と、完全な負け試合を勝った梨田昌孝監督も笑いが止まらなかった。

 この試合大村が先頭打者本塁打と満塁本塁打、益田が代打アーチ、そしてローズが最後にサヨナラ弾。この4種類の一発が1試合で出たのはプロ野球史上初めてだった。

 近鉄の名前はなくなっても、いてまえ打線の遺伝子をもった大村、ローズはバファローズで09年も健在。近鉄魂は今も受け継がれているのだ。


【2009/5/2 スポニチ】
arrow
arrow
    全站熱搜

    ht31sho 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()