無差別の殺意が、日曜日の「アキバ」を戦慄(せんりつ)させた。東京都千代田区の秋葉原電気街で8日起きた通り魔事件は、わずか数分の間に買い物客ら17人を巻き込み、7人の命が理不尽に奪われた。若者や家族連れらが行き交う歩行者天国での惨劇。逮捕された加藤智大(ともひろ)容疑者(25)は「生活に疲れてやった。だれでもよかった」と供述、携帯電話のサイトで事件を予告してもいた。「おとなしくて優秀だった」という容疑者の凶刃は現代の何に向けられたのか。現場には9日、犠牲者を悼む花が手向けられた。【高島博之、杉本修作、町田徳丈】

 事件は、歩行者天国になっていた南北の目抜き通り「中央通り」と、東西の「神田明神通り」の交差点付近で起きた。

 警視庁万世橋署の調べや目撃者の証言では、加藤容疑者が白いトラックで現場に現れたのは午後0時半ごろとみられる。神田明神通りを西から東に猛スピードで走り抜けて交差点に突っ込み、数人をはねた。トラックは約30メートル進んで停止。加藤容疑者は車を乗り捨てて徒歩で引き返し、「わあー」と奇声を発しながら、ナイフで数人に切りつけた。「ニヤリと笑みを浮かべていた」との証言もある。

 さらに逃げまどう人たちを追い立て、体当たりするようにして襲いながら交差点を南に折れる。1本目の路地の入り口付近で警察官ともみ合いになり、西に入ったところでようやく制止された。走った距離は約200メートル。被害者は悲鳴を上げ、路上に次々と倒れた。歩行者天国は逃げまどう人で騒然とし、「救急車を呼べ」「逃げろ」と叫び声が上がった。

 何十人もの人が走ってくるのを見て外に出たという免税店の男性店員(30)は、逮捕の瞬間を見た。路地に追い詰められた加藤容疑者はナイフを振り回して抵抗したものの、制服警官に拳銃を向けられると、観念したようにナイフを置いた。直前まで携帯サイトに事件の予告を書き込んでいた加藤容疑者。孤独をうかがわせる文面には「途中で捕まるのが一番しょぼいパターンかな」との記述もあった。ベージュのジャケットの胸元は返り血で赤く染まっていたという。午後0時35分、逮捕。事件はわずか数分間の出来事だった。

 交差点付近にいた江東区の会社員の男性(41)によると、「ドーン」という音で振り向くと、数人がトラックにはねられ倒れていたという。「男性2人の意識はなく、『頑張れ』と声をかけていたら、今度は警察官が刺され、『うわっ』と悲鳴を上げて交差点内に倒れた」と話した。

 大田区のフリーターの男性(19)は「男が、はねられて倒れた人に馬乗りになり、胸や背中めがけナイフを何度も振り下ろした」と証言した。中野区の無職の男性(34)は心臓マッサージをして若い男性を救護した。「意識はなかった。あの人はどうなったろう」と安否を気にかけた。

【2008/6/9 MSN産経ニュース】


【國際】秋葉原通り魔:携帯の映像瞬時に広がる 若者らが救助活動

 8日に通り魔事件の起きた東京・秋葉原はJR秋葉原駅を中心に家電製品の量販店が建ち並ぶ世界有数の電気街として知られるが、近年はゲームやアニメのマニアが集まる「オタクの街」として、独特の若者文化の発信地にもなっている。今回の事件も、現場に居合わせた若者らが携帯電話などを使い、瞬く間に現場の情報や映像が広がった。負傷した被害者を救護する若者の姿も目立った。

 事件現場となった「中央通り」(道幅約30メートル)沿いには、アマチュア無線やパソコン周辺機器など以前からの専門店が建ち並ぶ一方、ウエートレスがアニメキャラクターの衣装をまとった「メイドカフェ」なども点在する。05年に茨城県つくば市とを結ぶ「つくばエクスプレス」が開通してからは、秋葉原の人出はさらに増えた。

 警視庁などによると、秋葉原で歩行者天国が実施されるようになったのは1973年からで、現在は日曜・祝日に中央通りの約800メートルが対象。多い時には8000人もの人でごった返すという。

 事件当日、たまたま遊びに来ていた千葉市の新聞販売店の男性店員(24)は、倒れた男性に駆け寄り介抱した。「どうしてこんな場所で、こんな事件が起きるのか」。男性店員は、そう言って脈を取る右手を震わせた。止血のためにタオルを差し出したり、人工呼吸や心臓マッサージを試みる若者も多数いた。

 秋葉原では、最近、路上で「撮影会」と称して下着を見せるパフォーマンスなどが目立つようになり、多数の苦情が寄せられていた。警察がパトロールを強化する中で事件は起きた。【工藤哲】

【2008/6/9 毎日新聞】
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