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【10月3日】2005年(平17) 



 高校生と大学・社会人の分離ドラフトが導入された。1巡目の指名で報徳学園の片山博視投手、大阪桐蔭の辻内崇伸投手、福岡第一の陽仲寿(ヨウ・チョンソ)内野手をめぐって、各2球団ずつが競合し抽選となった。



 広島と楽天が指名した片山は楽天が交渉権を獲得。辻内には巨人とオリックスが名乗りを上げた。



 「当たった!」。満面の笑みで右手に持った二つ折りの紙を、オリックス・中村勝広GMは高々と掲げた。その姿に圧倒されたのか、巨人・堀内恒夫監督はくじを見ようともせず苦笑い。会場では「辻内の交渉権はオリックス」とアナウンス。学校内で会見に臨んだ辻内は「素晴らしい球団に指名された」と、硬い表情で話した。



 ところが、席に戻った堀内監督が怪訝そうな表情をしている。「オレの方の紙に“交渉権確定”って書いてあるんだけど…」。



 今度は陽の抽選に入った。日本ハムのトレイ・ヒルマン監督、ソフトバンク・王貞治監督が2枚用意された封筒をそれぞれ1枚ずつ引いた。ヒルマン監督が軽く右手を上げ、コミッショナー事務局は「陽の交渉権は日本ハム」と宣言した。



 これに対し、席に戻った王監督は「こっちが当たりでしょ」と抗議。事務局は「交渉権はソフトバンク」と訂正した。



 今度は日本ハム側が黙っていない。高田繁GMらが異議を申し立て、先に抽選を終えた巨人やオリックスのものと見比べた。すると、議長の小池唯夫パ・リーグ会長が、こうアナウンスした。「辻内は巨人、陽は日本ハムが交渉権獲得」。一体、どうなってるの?



 二つ折りのクジは右側に当たりクジ、はずれクジとも赤の丸い判子で「コミッショナー事務局の印」が押されている。問題は左側。当たりならば「交渉権確定」の5文字が刻印されており、はずれなら白紙のまま。中村GM、王監督とも赤丸の印を当たりと勘違いしてしまったのが、混乱の始まりとなった。



 混乱の原因は事務局側から何が当たりで、何がはずれかの説明を事前に行っていなかったことにあり、それ以上に議長が交渉権確定のくじの確認作業を怠ったことで問題は拡大してしまった。



 これで2人の選手の様子はガラリと変わった。あまり嬉しそうではなかった辻内は巨人に訂正されると、「小さい頃から巨人ファン」と一転して表情が緩みっぱなし。一方、意中のソフトバンクの“交渉権獲得”で嬉し涙を流した陽は、日本ハムに訂正されると絶句。



 「今の気持ちは?」「(10秒以上考え)嬉しいです」「日本ハムのイメージは?」「分かりません」「目標は?」「……」「どんな選手になりたい?」「……」。



 そんな陽だったが、プロ2年目の07年、日本ハムの1軍選手として50試合以上に出場。チームのクライマックスシリーズ進出に貢献した。







【2008/11/21 スポニチ】
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