イチロー、敵地での大歓声に「戸惑った」 一問一答(1)

【アーリントン29日=丹羽政善】レンジャーズ戦の第1打席でレフト前へヒットを打ち、日米通算3000本安打を達成したイチロー。試合後、多数の報道陣に囲まれる中、その心境を語った。長時間に及んだインタビューのもようを3回に分けて紹介する。

――打ったときの気持ちは?
「『詰まった』と思いました。アハハハハ。ちょっと狙っていたので、初球を。1球目に決めようと思っていた。決めたかった。絵的にも、それが一番、さまになると思っていたので、1球目にいった。それがホームランになれば一番いいので。あっ、でも詰まった、と思いましたね。でも、ヒットだ、みたいな(感じ)」

――狙っていた割には、自然なスイングに見えたが。
「狙いにいっても、『詰まる』と体が感じると、ああいう動きになると思いますよ」

――節目の数字に届いて、あらためて思うことは?
「1992年に初ヒットを打った。まあ、嫌々打った初ヒットですけども。一軍を拒否して、行かされた福岡遠征でのヒットだったので、嫌々だったんですけど。それからここまで、別に長いとは思わない。でも、この1週間はやけに長かった」

――なぜ長かったのか?
「意識をさせられて、結果を出せない日というか、打席が続くことでしょうね」

――すぐに、3001本目が出た。思うことは?
「いつも通りですね。節目を超えた後の1本はすごく大事なので、あの1本は僕にとって、すごく価値のあるものでしたね」

――プレッシャーとのつき合い方が上手になった、と傍目からは見えるが。
「とてもそうは思えないですね。まあ、時間次第だと思っていた。バットを振ってれば出るんだから。普段なら外で練習するものを(わざわざ)しなかったりもしましたが、それは僕にとって必要なことだったので、やりました。それが、今までの経験によるテクニックかどうかは、ちょっと分からない。でも、そういうことをしましたよね」

――(敵地にも関わらず)意外にも拍手が多かった。その反応については?
「何もないと思っていたので、すごく戸惑いましたね、かといってこんなこと(ヘルメットを高くあげる仕草)はできないし、でも、無視はできないというところ。すごく戸惑った」

――2回、ヘルメットを脱いで声援に応えたが。
「えっ、もう1回? っていう感じになりました。しかもテキサスでは、割と静かな、のんびりとした雰囲気でやっているので、(大歓声を)一番想像ができない」


イチロー、「張本さんの言葉思い出した」 一問一答(2)

【アーリントン29日=丹羽政善】日米通算3000本安打を達成したイチローの試合後のインタビューでは、それまで日本球界で唯一3000本安打を達成した張本勲氏(元東映:現日本ハムほか)や、「日米通算」の持つ意味についても話題が及んだ。

――誰かの顔や、誰かの言葉が思い浮かんだか?
「張本さんですね。1995年の春に『3000本を打つのは、おまえだ。首位打者(7回)を抜くのも、おまえだ。最終的にヒットの記録をおまえに抜いてもらいたい』って言われたんですよ。なので、そのことを一番思い出しましたね。張本さんは、覚えてないかもしれないですけど」

――その張本氏は、もう、「あっぱれ」というコメントを出している。
「まあ、そこは、あえて『喝!』と言ってほしかった。『あっぱれ』と言ってしまいましたか。どこまでも『喝!』と言い続けてもらいたいですよね」

――張本氏から3000本と言われた当時、実際にイメージできたか?
「できないですよ。200本を打った翌年、オープン戦の東京ドームだったと思いますけど、張本さんが本当に今日のこの日を想像して言われていたら、すごいことですよね。かといって、誰にでも言うわけではないと思うんですよ。だから、何かの確信か、確信までいかないまでも、何かを感じていってくれたと思うんですよね」

――張本氏は、日米通算4256安打とメジャー3000本を目指してほしいと言っている。
「そこのギャップが面白いところですよね。3000を打った人は、結局は、細かい小さなことの積み重ねを知っているわけじゃないですか。その人が、いきなり4000とか言うのが、おかしいですよね。そこが面白い。憎めないなと思ってしまいますけど。僕の目標として、来年のシーズンが終わるときに、(メジャー)2000本を達成したいとは思ってます」

――日米3000本について、多くが通過点と認識しているが。
「いいんじゃないですか。実質15年のシーズンでしたけども、ここまで、まあ、いいですよね。ペースが。悪い気はしないですよね」

――通過点と他人から言われることは?
「そこで反発する僕はいないですから。いいんじゃないですか。だって、そこへ辿り着くまでに感じていることは、別に人が知る必要がないこともたくさんありますし。知ろうとしてくれたら、それはそれでいいし」

――「日米通算」の記録だが、移籍の制約がなければ20代前半にメジャーで積み重ねたかったか?
「そこはもう、言ってもしょうがない。日本で積み上げてきたものは、安打だけではなく、凡打の中にも僕の技術を磨いてくれたものだし、日本時代に養われた技術をこちら(アメリカ)で使って、僕はヒットを打ってるわけですよね。ですから、そんな発想はしないですよ。例えば、18か19のときに来てたら、とは考えない。そもそも、技術がまだないんだから。だから、そのときに(メジャーへ)来てたら、今の僕はない可能性の方が高いんじゃないですか。そういう発想は、考え方も含めて、日本時代に養われた。で、アメリカの人の中には、『日本でのヒットなんか(たいしたことがない)』みたいな考えが絶対あると思う。でも、申し訳ないけど、アメリカでのヒットのペースの方が速いんですよ。だから『日本の方がレベル高いんじゃないの』みたいなことは言えますよね。(アメリカの方が)試合数だけ多いからっていうのだと、ちょっと弱いけどね。そこはちょっと、誇りにしているところ」

――その議論は、イチローがきっかけになったが。
「まあ、最初はやっぱり気持ちいいよね。何にしても。世の中の議論を巻き起こすのも、自分がそこにいるっていうのは悪い気はしないよね。ただ、議論に対して、それでいいと思うよ。日本とアメリカを合わせて、3000。それでいいと思うね」


イチローの妥協なき日常の原動力とは? 一問一答(3)

【アーリントン29日=丹羽政善】日米通算3000本安打を達成した試合後のインタビューも後半に差し掛かると、イチローは自身を追い込む原動力や、これから先のことについても語った。

――ヒットを打つ執着を周りの選手から感じるか?
「ほとんどないですね。けど、王(貞治)監督は、(現役時代に)ヒットを打ちたいという気持ちが自分より強いと思う人はいなかったらしいです。ただ、『イチローは自分より強いかもしれない』って言ってくれたことがある。日本でやっているときですけど、それはうれしかったですね」

――4000本安打は見えているか?
「ものすごく遠くですけど、まだ見えないことはない」

――妥協なき日常。言い訳を作らない。強く自分を追い込める原動力は?
「僕が、何かを自分のために生かすことというのは、人のことを見て学ぶことが多いんです。人の行動を見ていると、すごく気になることがたくさん見えてきて、それを自分に生かすというやり方で、ずっとそうやって、今の自分があるような気がするんですよ。その中から、自分の信じているものなんかが生まれてきて、それを生かしていく。1994年に210本打って、給料が10倍になったわけですよね。あのときから、自分に対する責任、自分が負っている責任というものを、考えるようになりましたね。自分の行動や、発言によって、大きな影響が出るということを。それからというのは、今これを人が見ていたら許さないだろうな、という行動はなるべくしないようになっていきましたよね」

――相手の視線を意識し、また相手を鏡にした?
「そういうことを考えるようになったのは、14年前かな。で、アメリカに来て、また想像していたものと違う世界があったわけです。いいことも悪いことも。アメリカでは、特にはっきりと答えが出るので、僕にとってはすごく助けになりました。『あっ、ああやってやらなければいいんだ』ということが、あまりにもたくさんあって。あのね。『こうした方がいい』というのは答えが出づらいんですよ。でも、明らかに『それはまずいよね』という中には、はっきりとした答えがたくさんある」

――「これがいい」と追いかけるより「これをしてはいけない」と考える?
「どっちかと言うと、それが多いですよね」

――これから先という部分をどう見ているのか?
「ちょっと抜きながらやるというのが、僕のやり方なので、そこは人の目をごまかしたいな。残念ながら、アメリカには固定観念みたいなものが非常に強いので、それとの戦いとは当然出てきますよね。だから、そこをいかにだましていくか。目いっぱいやってはいけないですよ。解釈によっては、いろんな意味になってしまいますけど」

――目標は変えていく?
「それは、常にそうですよ。今回だってそうですよ。オールスター前にやりたかったけど、できなかったら、次のプランを立てるわけですから。そうやって、もちろんやっていきますよ。何かがこう、イメージと合わなかったときや、計画通りいかなかったときは、当然そういうことをやりますよね。そうしなかったら、今度、前に進むことができないので」

【2008/7/30 MAJOR.JP】
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