かつてバッティングセンターで無心にバットを振り続けていた少年が、日本と米国にわたる大記録を達成した。米大リーグ・マリナーズのイチロー(34)が29日、日米通算3000安打を達成。日本での7年連続首位打者、大リーグのシーズン最多安打など、数々の記録を塗り替えてきた天才打者が、また新たな勲章を手にした。かつてのイチローを知る人々は口々に偉業をたたえ、わがことのように喜んだ。【花井武人、山田一晶、立松敏幸】

 かつての鈴木一朗少年が、小学3年から高校3年まで毎日のように通い、バットを振っていたのが愛知県豊山町の「空港バッティングセンター」。

 管理人の石井一三さん(64)が記憶している少年時代のイチローは、ミートはうまいけれど、小柄で非力だった。それだけに「けがもせずに、体に気を付けている姿勢がすごい」と感心し「メジャーでの2000本、3000本を目指してほしい」と話す。

 イチローは高校時代は投手で、センバツ出場も果たしている。当時の愛工大名電高監督だった中村豪(たけし)さん(66)は高校時代のイチローについて「物静かで余計なことを言わない男だったが、プロでやるという目的意識ははっきりしていた」と語る。

 96年の日本シリーズでイチローのいるオリックスと対戦した、長嶋茂雄・元巨人監督は、「イチロー君らしいアグレッシブなヒットでしたね」と独特の言い回しで称賛した。「この記録はイチロー君が持つ天性のスピードと日々の技術の研鑽(けんさん)によって生まれたものと思う。プレーを拝見するたび、『さすが』と感じさせる数少ない選手です」と、かつてのミスタープロ野球は絶賛した。

 王貞治ソフトバンク監督は「年齢的に考えると、4000本に到達する可能性が大きい。今年どこまで伸ばせるか、そういう興味を持って彼のプレーぶりを見たい」と期待した。

 ◇喜ぶバット職人「携われて幸運」
 イチロー選手が92年のオリックス入団時からバットを作り「現代の名工」にも選ばれているミズノテクニクス(岐阜県養老町)のバットマイスター、久保田五十一(いそかず)さん(65)は「大記録に携われて幸運です」と喜んだ。

 イチロー選手が大リーグで使用しているのは900グラムの細身のバット。しなりが利いて飛距離が出るが、打球を飛ばせるポイントは狭い。「アベレージヒッターのバットではない。それで高打率をあげているのだから驚く」と言う。これまで約1300本を納品したが「バットを大切に扱うイチロー選手が試合で実際に使用したのは半数に満たないのでは」と推測する。

 かつてピート・ローズ選手が、大リーグの通算安打記録を打ち立てた時も、使っていたのは久保田さんが作ったバットだった。久保田さんは「イチローさんには、ローズさんの記録(4256本)も破ってほしい」と期待を込めた。【黒尾透】

【2008/7/30 毎日新聞】
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